ペルーで働く外国人デザイナーたち(横塚永美子)

2016/04/07 00:00 更新


みなさんお元気ですか。日本はもうそろそろ春ものが出そろった時期ですね。ペルーはついこの間、暦の上で秋になりました。

今年のペルーは場所にもよりますが、連日UV指数平均で11~16で、TVでも皮膚がん防止のために外出の際は日焼け止めを塗るように呼びかけてました。これからペルーに行かれる方、日焼け止めは必須アイテムです。

私もほんの数十分、日焼け止めを塗らず外出した際は、うっすらと赤くなってしまう肌質に加え、ケアを怠った少しずつの積み重ねでシミそばかすがここ数年で増大…秋になったとはいえ、まだまだ要注意でございます。

さて今日はペルーで働く外国人デザイナーを紹介したいと思います。

ムーミンの国?フィンランドのヘルシンキからメキシコを訪れ、そこから下りながらペルーにたどり着き、ペルーのテキスタイルデザイン会社のデザイナーとして働いていたJenni Savander(ジェニー・サバンダー)。

 


コレクションとジェニー

 

ペルーのリマに来てから15kg位体重が減りたばこもお酒も飲まなくなった。必要なものを最小限だけ買うの、とジェニー。

人間関係のストレスやデザイナーとしての責任、月に何往復もするアンデス↔リマ間の旅の疲れ、文化や言葉の壁からのストレスを解消するため最近はまっているのが、‘断捨離’なの、っと彼女の口から聞いて笑いながら驚いてしまいました(ちなみに彼女は日本語話せません)。

そのクリエーションは自身のコレクションからも反映されています。

 


2015年のペルーモーダに出展されたコレクション

 

無駄なものを一切省き、シンプルに生きようとメッセージが込められています。そして、ただ無駄にシンプルなのではなく、そこには凛とした佇(たたず)まいのニットが並び、かつてのジルサンダーのコレクションのような洗練された美学があります。

残念ながら去年、母国に帰国したジェニー。たった一人でペルーに来て仕事を探しコレクションまで発表した彼女の勇気とその仕事ぶりに感服されられました。フィンランドでも彼女の活躍を願うばかりです。

次はPietà(ピエッタ)のフランス人、Thomas Jacob(トーマス・ジャコブ)。彼とは去年のペルーモーダのファッションスナップで出会いました。

単純に、「あ、外国人の方だから話を聞こ~!」と思ったのがきっかけ。その後話をしていくうちに、トーマス自身もブランドを持っていることを知り、後日改めてインタビューさせてもらいました。

実はこの記事はずっと温めていました。

みなさんの記憶にまだ新しいかと思いますが、最近では群馬県伊勢崎市でのペルー人同士の殺害事件、去年、埼玉県の熊谷市でおきた6人殺害事件。その犯人の兄は25人を殺害しペルーで服役中。日本で起きた事件よりもこの熊谷殺害事件の兄に注目が集まりました。

私の実家が近いこともあり、一部の親戚や友人らも、まるで同じくくりのように一時ペルー、ペルー人は怖いというイメージがついた。ように思えます。

ペルーのイメージは、マチュピチュ、ナスカ、アルパカなどミステリアスで豊富な資源と、貧富の差は激しいが美しい国。そのイメージが、一握りのペルー人のせいで相当なイメージダウンさせられたことは間違いないでしょう。

私自身さえもショックな出来事でありましたし、日本に居るペルー人をはじめ、ペルー在住の日本人の方なら日本にいる家族や親せきのペルーに対するイメージダウン払拭にどれだけ力を払ったのでしょうか。

そう、なぜこのピエッタと関係があるかって?

オーナーデザイナーのトーマスは、リマ市内の刑務所2か所で服役中の受刑者に仕事を与えているのです。Tシャツのデザインからプリント、縫製すべての過程を刑務所内で行っています。

このプロジェクトが軌道に乗るまで1年以上の歳月がかかり、受刑者に縫製やミシンの使い方からやプリントの仕上げ、はたまたデザインのこつなど、ひとつひとつ覚えさせました。

 


 

事実、サンイシドロ区にある彼のオフィスには、彼と刑務を終えた事務的なアシスタントする女性が働いているだけです。

このピエッタのプロジェクトを始めたきっかけは、刑務所のイベントに誘われ服役中の受刑者とコミュニケーションをとったのが始まりだったそう。

リマ市内の刑務所には、盗難や強盗犯が多数で5年から10年くらいの服役が待っています。彼らの不安の多くは、出所したら働くことが難しいこと。10代、20代で、本来ならば、仕事の基礎や経験を積むことができるのですが、仕事のスキルはなく社会経験の少ない彼らの不安をトーマスは背負い、26歳にしてこのプロジェクトを始めました。

今年で29歳のトーマス、20代にしてひとりでこのプロジェクトを引率していたことにも驚きです。そんな彼に、ずっとペルーに居て母国の家族や友人が恋しくない?と訊ねたら、「ここに仕事(プロジェクト)があるから…」とポツリ。この言葉が強く心に残っています。

取引先は、ヨーロッパをはじめ、最近ではこのプロジェクトに賛同してくれているカナダ、アメリカ方面も増えているようです。

日本でも近年、食料品など顔の見える生産者など消費者に対し、安心感と日本ならではの保証のようなものでブランド化していますが、このピエッタのプロジェクトの場合はどうでしょうか。賛否両論があるかと思いますが、あなたはどうですか。

この2人のインタビューで自分の人生の中で大切なことは何だろう、海外で働くということ、仕事とは何だろうと改めて考えさせられました。

それではまた!

チャオ



マチュピチュだけじゃない?!もっとディープなペルー情報を知りたい方必見



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