EU、仏ファストファッション規制法案を支持 法的整合性に懸念も

2025/10/16 17:00 更新NEW!


 【パリ=松井孝予通信員】フランス上院が6月に可決したファストファッション(仏語=モード・エフェメール)規制法案について、欧州委員会が見解を示した。

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 環境負荷の大きいウルトラ・ファストファッション(モード・ウルトラエクスプレス)の抑制という目的は全面的に支持する一方で、EU(欧州連合)の法律との整合性に懸念を示した。

 同法案は、「シーイン」や「テム」などを想定し、広告禁止や小包税の導入を盛り込むが、欧州委はこれらの措置がEUの電子商取引指令やデジタルサービス法(DSA)と矛盾する恐れがあると指摘。特に広告の全面禁止は、加盟国間で企業を差別してはならないとするEU単一市場の原則に反する可能性があるとした。シーインは欧州本社をアイルランドに構える。

 フランスは法案の実施前に、EU法との整合性を確認するため欧州委員会に通知する義務がある。委員会の「承認」は法的条件ではないが、無視すれば後に欧州司法裁判所で争われるリスクが生じる。欧州委は、政治的にはフランスの姿勢を評価しつつも、法案に明瞭さを求めている。とりわけ広告禁止と小包税をめぐる条項には、理念と手続きのずれが残る。フランスがどのように条文を修正するかによって、同国の制度がEU全体の先例となる可能性もある。

 今回の見解は、単一市場という制度の器の中で、環境政策がどこまで国の意思を表現できるかという問いを投げかけた。



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