ケケン試験認証センターはテキスタイル・エクスチェンジ(TE)規格の認証業務を年内に始める。TEはサステイナブルな繊維産業構築のための調査、啓発行い、世界375社が加盟する(20年6月)団体で、ケケンは19年9月に加盟、20年1月にTE規格認証機関となる申請をし、承認を待っている段階だ。日本の検査機関として初のTE規格認証業務を実施し、日本のサステイナブルな繊維産業の構築を支援する。丸茂征也製品認証事業部長に、日本での国際認証業務の意義などについて聞いた。
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18年に米国の動物愛護団体PETAのアンゴラヤギ虐待の告発があり、様々なグローバルブランドがモヘヤ素材の不使用を宣言することになりました。モヘヤは扱い量が少なく、不使用宣言をすれば「サステイナブルな企業」と言われますが、生産者の生活はどうなるでしょう。サステイナブルな繊維産業構築では、動物愛護の問題は、その産業の伝統と生産者の生活とのバランスを考えるべきです。
この状況を受けて、カシミヤをはじめ獣毛の検査業務に携わってきた経験を生かし国際的な認証機関も取材し、カシミヤのためのサステイナブル素材の基準試案づくりに取り組みました。具体化には至りませんでしたが、TE規格認証業務の実施に向けた活動につながるものとなりました。
18年7月にはTEのユーザーミーティングにオブザーバー参加しました。TEにはアニマルウェルフェアと環境基準をクリアした羊毛の製品に含まれる内容と割合を認証するコンテンツ基準、RWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)があります。このミーティングでは、日本にTE規格認証機関が数少ない外資機関しかないことが、企業の認証取得のハードルを高くしていることが分かりました。そこでTE規格認証機関となるための準備を始めました。19年5月にはTEのラレー・ペッパー代表が来日しケケンを訪問視察しました。同9月にTEに加盟、20年1月には認証機関認定の申請を行いました。また、認証機関認定を行う第三者機関として、製品評価技術基盤機構(NITE)が20年7月から認定業務をスタートしました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定よりずれ込んでいますが、年内にはTE規格認証業務をスタートできる見込みです。監査員に必要な教育を施し準備を進めています。コロナの影響で今はトレーニングができずにいますが、中国にも監査要員はいます。
ケケンでは、RWSに加え、羽毛・リサイクル原料・オーガニック原料それぞれのコンテンツ基準、RDS、RCS、OCS、そしてRCSに製造プロセスの社会的・環境・化学的要件を加えたGRSの認証業務を実施します。農場・屠畜場の認証は実施しませんが、GRSでは原料が工場に入って以降のプロセスでの認証を日本と中国で実施します。
今、日本では認証取得が売るための手段になっている側面があり、コストが見合わなければ認証取得しないという判断をしがちです。しかし、TE規格認証が広がれば消費行動も変わり、認証製品も広がります。地球環境や動物愛護に貢献し、サステイナブルな繊維産業の構築につながります。循環型社会へ向かう世界的な潮流はさらに強くなります。SDGs(持続可能な開発目標)の目標達成とコストの両立は難しいことです。しかし、思考停止してはいけない。考え続けることが大事です。
(繊研新聞本紙20年10月23日付)