密着!ファイブフォックスの販売力

2015/07/13 16:15 更新


《販売最前線》

 販売は会社の花形──顧客商売を強みとするファイブフォックスは、「販売員の質は経営の要」として、販売員のレベルアップ・チームワークの向上に力を入れている。元々「販売のファイブフォックス」と呼ばれるほど、強固な販売力を築き上げてきた。時代の変化とともに進化させた販売戦略で、販売力に磨きをかける。

(佐々木遥) 

サンドイッチミーティング チームワークなくして売り上げなし

サンドイッチミーティングは食べながら話すことで気持ちを軽くして本音が言いやすい環境を作る(コムサメン)
サンドイッチミーティングは食べながら話すことで気持ちを軽くして本音が言いやすい環境を作る(コムサメン)

 

本音のぶつかり合い

 各店の売り上げを伸ばすためには、スタッフ同士の活発なコミュニケーションやチームワークが欠かせない。しかし、「いまどきの若い店長の中には、コミュニケーションを取るのが苦手で、自分の考えをうまく言葉に出せない人もいる」(谷本茉木販売部部長)のも確か。そこで同社が昨年から始めたのがサンドイッチミーティングと呼ぶ取り組みだ。スタッフ間のコミュニケーションを促すため、軽食代など必要な費用は本社が負担して、店舗側に意見交換の場を持つようルール化したのだ。

 実際のミーティングをのぞくと「店長も率先してもっと接客してほしい」「店長が電卓をたたく行動が無言のプレッシャーになる」といった声が相次ぐ。店長には耳の痛いものだが、「率直に話し合える環境は大切」と受け入れられている。

数字良い時ほど要注意

 効果は既に出始めている。コムサメン岐阜高島屋店は大きく予算割れした14年11月の翌月、エリアマネージャーに座長を頼み、ミーティングを実施。同店は店長含め3人という小さいチームのため、1人でもモチベーションが下がると売り上げ、業務両面に影響が出る。

 4~10月は連続で予算を達成していたため、「店の数字さえ取れていれば問題ないだろうと思い込んでいた」(平田陽介店長)が、数字を落とした11月後半に店の雰囲気が悪化、会話も減る。良い数字の裏に、コミュニケーション不足が隠れていた。

 「計数が良くても、店の状態が良いとは限らない。良い時ほど店、スタッフに目と気を配る必要がある」と学んだ。

 ミーティングをきっかけに会話が増え、売り上げも回復。スタッフ同士の会話や良い人間関係がそのまま接客につながるようになった。平田店長は「業務時間内では差し障りの無い話で終わってしまう。きちんとスタッフが本音で言い合えることの大切さを知った」と話す。

「サンドイッチミーティングがきっかけで自分の意識が変わった」と話す平田陽介コムサメン岐阜高島屋店店長
「サンドイッチミーティングがきっかけで自分の意識が変わった」と話す平田陽介コムサメン岐阜高島屋店店長

スペシャルセールススタッフ(SSS戦略) 憧れの存在で士気を上げる

スタッフ全員のレベルアップのために毎朝の勉強会は欠かさない。薦めるスタイリングや言葉遣いなどを確認する岩崎さん
スタッフ全員のレベルアップのために毎朝の勉強会は欠かさない。薦めるスタイリングや言葉遣いなどを確認する岩崎さん

 

身近にいる「手本」

 販売力強化の一環として昨年、新たに「SSS戦略」もスタート。SSSとはSpecial Sales Staff(スペシャル・セールス・スタッフ)の頭文字で、「個人売上高が高いだけでなく、ファッション、ブランドが好きで、誰に対しても感じが良く、自らの意思で気付いて行動することができ、新規顧客を増やし続けることができる人」を指す。店長や副店長は店単位での位置づけに過ぎないが、SSSは全社での位置づけ。SSSという販売員の手本となるステータスを作り、「全販売員のレベルアップを図り、モチベーションアップにつなげる」(谷本販売部長)ことが狙いだ。

 昨年10月、6030人の全販売員の中から、6人のSSSを選出した。主な役割は社を挙げて行う大イベントでの販売サポートや後進の育成など。「『この人みたいになりたい』という憧れの対象が身近にいることで、言葉だけでは伝えきれない販売戦略を具体的にイメージしてもらうことができる」と期待する。

売り上げ=お客の評価

 そんなSSSの一人が、コムサデモード岐阜高島屋店の岩崎志乃店長だ。同店の店長になって3年。客数を伸ばすことが難しいとされる地方店でありながら現在、22カ月連続で予算達成中だ。

 岩崎店長は「売り上げ=お客様からの評価」と考え、スタイリング提案に力を入れる中で、数字を積み上げてきた。予算という明確な目標を持つことは、「そこに向けて頑張ることで張り合いが出る」と話す。

 スタッフの育成にも余念がない。毎朝、欠かさず5~10分の勉強会を実施。常に「もっとこうした方がいいかも」と向上心は尽きないが、先頭に立って情熱的な接客姿勢を見せる。チームワークを高めてふり客の再来店を増やし、連続予算達成の記録更新を目指す。

SSSの岩崎志乃コムサデモード岐阜高島屋店店長は「接客好き、服好き、コムサデモード好き」を自負する
SSSの岩崎志乃コムサデモード岐阜高島屋店店長は「接客好き、服好き、コムサデモード好き」を自負する

 

■谷本茉木販売部長に聞きました

各店のポテンシャルを高めるには?

〝人と人の問題〟を解決

 

谷本茉木販売部部長
谷本茉木販売部部長

 売り上げが低迷している店をみると、問題はだいたい「人と人」なんですよね。不満がたまると顔に出てしまいますから、思っていることをきちんと伝えられる場を作ることが大切です。

 スタッフの率直な意見を聞くことは、店長にとっては耳が痛くなることもあると思います。ですが、本音をぶつけ合って気持ちを一つにしないと、強いチームを作ることはできません。逆に、一つの目標を共有できたチームは本当に強い。そうした意味で、サンドイッチミーティングは大きな成果をあげています。

 お客様に気持ちよく買い物を楽しんでもらうためには、「いい気作り」が欠かせません。店の雰囲気が暗いとお客様にも伝わってしまいますから、スタッフのチームワークは非常に重要です。



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