果実の収穫後に廃棄されてきた膨大な量のパイナップルの葉を有効活用した繊維事業が始動している――。日本一の生産地、沖縄県のフードリボン(宇田悦子社長)は台湾、フィリピン、中国、インドなどのアジア諸国・地域と連携し、パイナップル繊維の量産化に踏み出した。環境にやさしくサステイナブル(持続可能な)天然素材を提供することで新たな産業の創出や生産農家の所得向上にもつながる。
(大竹清臣)
日本のパイナップルの98%は沖縄で生産されている。しかし、これまで、果実の3倍ほどの量がある葉は堆肥(たいひ)にもならず捨てられてきた厄介者だった。しかし、宇田社長は「地域に埋もれている未利用な生産物を見つめ直すことで、サステイナブルを軸とした新たな価値を生み出せるはず」と繊維化に着手した。
シルクの4分の1の細さ
昔からフィリピン北部などでは伝統産業としてパイナップル繊維を欧州へ輸出してきた歴史はあった。ただ、繊維になるのは生の葉の1%だけなので、沖縄(葉の量約1.6万トン)だけでは大幅に不足するため、生産量世界第2位のフィリピン(約810万トン)、インド(約480万トン)、中国(約450万トン)、台湾(180万トン)から原材料を調達する。そのため、現地法人を設立する予定だ。台湾では20年夏に紡績協会(200社以上加盟)と契約を結び、量産体制を実現した。
パイナップル繊維はシルクの4分の1の細さが特徴で、通気性や吸水性、保水性などに優れる。国内の新内外綿で綿と掛け合わせて糸にする。インドのオーガニックコットンを使うことで、綿花栽培の土壌汚染と健康被害、児童労働などの課題にも向き合っていくという。