健康や動きやすさなどの機能性に対して、生活者の関心が一段と高まっている。従来は当たり前だった構造を見直し、より楽に身に着けられるファッション商品が目立ってきた。
(須田渉美、森田雄也)
ここ数年で消費の変化が見られるのが靴だ。スニーカーのクッション性に慣れてしまい、革靴を履いた時に歩きにくさを感じる人は多い。革靴の生産者にとっては逆風だが、そこに商品開発の糸口がある。
スニーカー並み
その一例は、東京・浅草の革靴メーカーのリフト。19年秋に特許を取得した「リフト製法」は、欧州製のクラシックなバレエシューズの製法を応用したものだ。アッパーの革と本底(アウトソール)を直接縫い付ける際、ゴム製の本底を一定の厚みでくりぬいて縫い合わせる構造にした。見た目は革靴でもスニーカー同様の屈曲性やクッション性を備え、自社ブランド「シーソー」として販売するほか、OEM(相手先ブランドによる生産)でも人気がある。さらに今春、丸洗いのできる革靴へとアップデートした。イタリアのメーカーと共同開発した特殊な形状のソールを使っており、洗濯機で洗っても変形しない品質を確保した。
今春、靴企画のデュプレックス(東京)が立ち上げた「シーセイ」も革靴の構造を見直した。靴業界に長く携わるデザイナーが、カウンターとかかとのソール部分が一体になったゴム製ヒール「ワンネス・ヒール・システム」(特許申請中)をビブラム社と共同開発した。屈曲性に優れたボロネーゼ製法のパンプスは、女性らしいスマートなトウラインで、足と靴の一体感ある軽やかな履き心地を実現した。このヒールに合わせ、健康的な姿勢を作る内側重心の歩き方を促す設計の木型も独自に開発している。今秋に向けては、ショートブーツやロングブーツも揃う。
素材に頼らない
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