25年に10周年を迎えたデイリーウェアの「ハクジ」は2月、ブランドの姿勢を伝える展示イベントを都内で行った。
デザイナーの佐々木杏さんが会場に選んだのは、古い一軒家を改修したギャラリー「などや島津山」。手掛けた建築家と協業し、国内産地で作るインナーウェアを空間のインスタレーションとして構成した。外側の通路に置いたトルソーにはキャミソールを着せ、裾をカットしないまま、丸胴のニットをくしゅくしゅと重なった状態でオブジェのように見せる。その先の屋外スペースには、天井につるした真鍮(しんちゅう)のバーに国内産地で作っている丸編みの生地を掛けて、柔らかな風合いを可視化するように展示した。アパレル製品の販売は行わず、「10周年を迎えるにあたって、製品の形にする前の過程を見てもらいたいと思った」と佐々木さんは話す。
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インスタレーションのテーマは「-」(線)。立ち上げ当初から、人の体や印象を美しく見せる線の出し方にこだわってカットソー製品を作ってきた。その原点を振り返るように、室内空間の高い天井から、最初に作った2型のキャミソールを30着並べて見せた。胸元のVラインが優しく緩んだ線を描くモデルだ。「ニット生地は組織だけでなく、湿度や温度によって仕上がり方も変わるし、ロットによって色も微妙に異なる。物作りの奥深さに接しながら、線や形の出し方を考えてきた。これからも少しずつ進化させていきたい」という。
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また、ブランド名の由来となった白磁器の作品を、陶芸家の伊藤環さんに作ってもらった。佐々木さん自身は卸売先から回収した製品の紙のパッケージを溶かして、石の表面を覆ったオブジェを制作。器とともに展示販売した。
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