《平成ストリートスナップ》セクシーカジュアル失速 サーフブランドの大波(1998年6月3日付)

2025/08/29 06:00 更新NEW!


 90年代後半から00年代にかけて、本紙にストリートスナップの記事をたびたび掲載していました。30年近く前の、都会の一瞬を切り取っただけの記事ではありますが、その背景を店や企業に取材し、ときには売り上げなどの数字も入れていて、当時の商売の動きも少しわかります。“平成リバイバル”など様々なレトロが注目を集めている昨今、改めて読み返すことで、ビジネスに通じるヒントが見えてくるかもしれません。ベテラン記者が振り返ります。

※本文は読みやすく直しています。社名やブランド名などは原文のまま掲載します。

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ポストセクシーカジュアル狙いサーフブランド急浮上 渋谷がTシャツの街に

1998年6月3日付


  人気を誇ったセクシー系カジュアルが失速しそうだ。ショップのミージェーン、メーカーのアルバローザやティアラの商品を中心としたヒットアイテムが、「ロキシー」「ピコ」などサーフカジュアルブランドの大波にさらわれはじめた。

 セクシー系カジュアルのメッカ、東京・渋谷109の周辺が変化したのは5月の中ごろ。それまでキャミソールドレスやパフスリーブトップだった女の子たちが、いっせいにロキシーのTシャツを着はじめた。〝露出スタイル〟のスポットのはずが、今やTシャツの街になってしまった。

 「『エッグ』のアキちゃん(女子高校生向け雑誌の読者モデル)がロキシーを着てたから」と雑誌の影響も大きいようだが、もともとセクシー系の女の子たちは新しいもの好き。変わり身が早い。量販店や地方まで広がった画一的な商品をいち早く振り切ったということだろう。セクシー系メーカーにも「ここまで広がったらもう終わり。リゾートアイテムなど本来作っていたものに戻るべき」という声が出ていた。

 ロキシー専門のナ・パリ・ロキシーショップが新規店を渋谷109の6階にオープンしたのは3月末。直後からTシャツがものすごい勢いで売れ出し、平日でも午後は棚が空っぽ。「土・日曜は1日に300~400枚売れている。置けばもっと売れるのだが、次の日に売る商品がなくなるので出さない」という。客は女子高校生がほとんどだ。彼女たちに火がついたら、もう止められない。


 ピコも人気だ。ピコのレディスのメーカー、アウトバーンは、今シーズンに入ってTシャツをすでに45万枚出荷している。メンズ(クリムゾン)と合わせると135万枚という勢いだ。

 当然ながら、セクシー系ショップやメーカーに影響が出ている。「レーシーなカーディガンなどトップの追加の動きが止まった」というセクシー系メーカーが多い。商品の単価も下げざるを得ない。ロキシーのTシャツは3000円と3900円が中心だ。あるメーカーは6900円と7900円のTシャツを作る予定だったが、急きょ4900円と5900円に企画変更した。「Tシャツがトレンドの中心になると、組み合わせはボトムだけ。周辺商品が売れなくなって全体の売り上げも下がります」

 夏物商戦第1弾が終わったところにやってきたサーフブランドのビッグウェーブ。セクシーラインを捨て、路線替えしてサーフ系Tシャツに合わせるアイテムを企画するセクシー系メーカーも出はじめている。

《記者メモ》

 感覚としては「ある日突然」に見えたのを覚えています。渋谷の若い女性たちがみんなサーフ系のTシャツを着ていてびっくり。慌てて取材に走りました。もっともこのブームもあっという間に終わってしまい、後に在庫の山を抱えたという話を聞くことにもなりました。特定のヒット商品が瞬く間に広がり、その浮き沈みも激しかったのです。

(赤間りか)

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