【パリ=松井孝予通信員】仏エルメスのメンズコレクションのアーティスティックディレクター(AD)、ヴェロニク・ニシャニアン氏が退任する。仏紙『ル・フィガロ』の独占インタビューで明らかにしたもので、来年1月のパリ・メンズコレクションでのショーを最後に、37年間携わってきた職を離れる。
88年、ジャンルイ・デュマ氏(当時会長)から「エルメスのメンズを自分の小さな会社のように率いてほしい」と託されたニシャニアン氏。以降、構築的なテーラリングと上質な素材の探究を軸に、着る人の現実に寄り添う「生きた服」、機能を兼ね備えた「ヴェトマン・オブジェ(服というオブジェ)」の発想を磨き上げてきた。控えめでありながら確かな美意識に貫かれたその表現は、メゾンのクラフツマンシップを体現する存在として高く評価されている。
インタビューでは「まだ(デザインの)アイデアはあるが、今は自分の時間を旅や夢に使いたい。長年の夢は日本で数カ月過ごすこと」と語り、退任については1~2年前から経営陣と話し合ってきたという。後任は近日中に発表される見込み。エルメスのウェア&アクセサリー部門の24年売上高は前年比15%増の44億ユーロ。レザーグッズに次ぎ、メゾンの成長を支える重要なカテゴリーとなっている。