コロナ禍でもにぎわうハンドメイド作品のオンラインマーケット「ミンネ」。自分にとってより快適で豊かな〝おうち時間〟を過ごそうと、アクセサリーや雑貨小物、食品まで個性あふれる商品が揃うミンネへこれまで以上に人が集まってくる。一方、出品する作家は、コロナ禍でも販路が絶たれずに消費者と直接つながれる売り買いの場として注目。4月は新規の作家やブランドの登録数が過去最高を記録した。創作熱量の高い作家が活動を継続できる道筋の一つを示そうとするミンネへの期待が高まっている。
(小堀真嗣)
■価値共有欲高まる
「おそらく、これから長期にわたる価値観の変化が起きている」と言うのは、ミンネを運営するGMOペパボの新井正樹執行役員ミンネ事業部部長。「その変化の一端がハンドメイドマーケットにも表れているのではないか」と話す。在宅時間が一気に増え、「家の中での生活をもっと良くしたい。テーブルのような家具、食卓で使うカトラリーや、そこで食べる食品に対してもこれまでよりこだわりたいと意識が向いた」。例えば、食品販売額は前年と比べて3倍のペースで推移している。
自家需要に加え、ギフト需要も伸びているようだ。元々、12月などシーズンイベントに向けたギフト需要で販売額も単価も上がる傾向はあった。この間は「食べて良かった、使って良かったものをギフトとして贈りたいという傾向が強まっている」という。「コロナ禍でリアルのコミュニケーションが乏しくなった分、価値を共有したい欲求は強くなっている。この傾向は長期的なトレンドになると思う」と見ている。
■イベントに17万人
ミンネはハンドメイドの価値を共有するプラットフォームとして存在感を高めている。コロナ禍に急きょチャレンジしたオンラインイベントの成功でより際立ってきた。3月末、さいたまスーパーアリーナで「ミンネのハンドメイドマーケット2020」(ハンマケ)の開催を予定していたが中止。通常、オンラインでの商取引だが、同イベントでは好きな作家に直接会え、作品に触れることができ、ミンネの認知度や利用満足度を高める重要なイベントだ。昨年は2日間で3万2000人以上が来場し、にぎわった。
今回はリアルイベントを中止したが、ユーザーの「〝エアハンマケ〟をやりたい」というツイッターでの一言をきっかけに7日間のオンラインイベントを開催。売買する場の提供にとどまらず、ミンネのスタッフと作家が協力してコンテンツを作り込み、エンターテインメント性に富んだ特設サイトを制作。「#エアハンマケ」をキーワードにSNSで情報を拡散した。
特設サイトには2800人の作家が参加し、約17万人が訪問した。参加した作家の中には、1000点以上を出品して売り切ったケースもあったという。新井部長は反響を受けて、「作家も購入者もいずれも売り買いの場を求めていた」と手応えを感じていた。
《メモ》
ミンネは13年秋にアプリを通じてサービスの提供を開始。ダウンロード数は18年秋に1000万を突破し、3月末時点では1149万まで増大している。登録作家数は63万人(前年同期は51万人)、作品数は1112万点(同956万点)。4月には増加ペースがさらに上向いた。年間流通額は約120億円(19年12月期、前期並み)。事業収益は販売手数料から得る。19年12月期の売上高は16億200万円(前期比3.7%増)、営業利益は9400万円(前期は6億8200万円の赤字)。
(繊研新聞本紙20年6月24日付)