2021年の「CINEMATIC JOURNEY」幕開けに際し、今、この時代だからこそ選びたいテーマはやはり「家族の絆」。
そこで今回は、ファッションとのつながりも深いフランス、そしてここ日本の新作からタイムリーな2作をピックアップすることにした。
まずは心地よいガーデンに設えた食卓を囲む、一見、夢のようなファミリー像をイメージするフレンチシネマ。現在公開中の『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』から。
実年齢も70歳を超えたとは思えぬ、美的バイタリティーでスクリーンを華やかに彩る大女優、カトリーヌ・ドヌーヴ。彼女が演じるヒロイン、70歳のアンドレアこそ、この家族の核となる母親だ。
その長男役かつ監督&脚本を手掛けたセドリック・カーン(下記画像左の人物)は、俳優としても数々の作品に出演しているが、実は本作が初の自作自演なのだとそう。
さて、そのストーリーとは…
それぞれ離れて暮らす家族が集う機会というと、やはり年中行事や冠婚葬祭といったイベントが中心となるのは、いずこも同じ。本作も同様に、母親の70歳の誕生日を祝うため、両親と孫娘が暮らす家でパーティーを開催するという設定だ。
その顔ぶれは息子2人とその家族やパートナーのはずが、なんと3年前に失踪した長女が突如、姿を現した。そしてお決まりの大混乱が巻き起こるといった展開に!
「それぞれ異なる人生観を持つ集合体の最小となるのが家族」だと教えられたことがある。
が、確かにその通りだと常々実感している。
そして昨年から続く、世界を包むコロナ禍という事態に、今改めて「家族の絆って?」という思いがよぎる。
一方、日々の暮らしの中で、そして映画の中でもファッション同様、スパイス的効果を発揮しているのが音楽だと思っている。
ちなみに本作では、「ザ・フレンチ」な楽曲がラインナップされており、プレス資料をチェックすると、下記のデータが判明した。
☑ フランソワーズ・アルディの「Mon amie la rose」
☑ ムルージの「L’Amour,l’amour,l’amour」
音楽は世代を超え、愛され続け、時として家族の絆を深めるキーアイテムの一つだということを本作からもさりげなく香り立つ。
全国ロードショー中
配給:彩プロ/東京テアトル/STAR CHANNEL MOVIES
©Les Films du Worso
「家族の絆って?」をテーマに旅する2021年初の「CINEMATIC JOURNEY」。
フランスに続いて向かう先は、ここ日本の映画『心の傷を癒(いや)すということ《劇場版》』。
阪神・淡路大震災から26年を迎えた今月17日。
時の流れの速度と、心の傷の回復速度が異なるように感じる昨今、目や耳にする機会が多くなったワードがある。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)。
震災当時、自らも被災する中、被災者の心のケアに尽力し、日本におけるPTSD研究者の先駆的立場の精神科医がいることを、遅ればせながら本作を通じ、知ることとなった。
自己紹介をする際に用いた例え「安心の『安』」という台詞が未だ忘れられない、安克昌先生だ。
志半ばの39歳という生涯ではあったが、その情熱を注いだ医師として半生を描いたテレビドラマ4話分を再編集したというのが本作。
映画館で出会い、決して長くはなかったが、「密」な生涯を添い遂げた夫婦としての愛、そして家族の絆が描かれた物語は、主人公を演じた柄本佑の演技力も伴い、安先生の人柄がしのばれる。
「誰も、ひとりぼっちにさせへん」
その言葉の奥深さを、本作鑑賞後、きっとあったかさを増すに違いない。
1月29日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開予定
Ⓒ映画『心の傷を癒すということ』製作委員会
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中