「ホテル」という名の思い出(宇佐美浩子)

2022/08/10 06:00 更新


どことなく夏が似合う街と思っているタイ・バンコク。自身も度々、そんな季節に女二人旅の経験があるからかもしれない。

そんなタイ発ヒップな作品『プアン/友だちと呼ばせて』と共に、「『ホテル』という名の思い出」をテーマに掲げ、8月最初の「CINEMATIC JOURNEY」へ向かいたく。

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スクリーンを彩るタイやNYのシティクルーズを楽しめるのも魅力の本作!

❝一緒に映画を作ろう❞

と申し出たのは、なんと本作製作総指揮を務める映画界の巨匠ウォン・カーウァイ。その相手がタイの新鋭、バズ・プーンピリヤ監督だったという背景もまた、タイ語で「友だち」という意味のタイトル、そして男二人のロードムービーチックなストーリー展開へとリンクするかのよう。

主人公の二人は、けんか別れをした元親友、ボスとウード。余命宣告を受けたウードからの電話をきっかけに再会、そして彼の「元カノ」思い出を巡る旅のドライバー役をボスが務めることに。そして思わぬ真実が?


監督の「10代の頃の夢の車」ヴィンテージBMW。彼が子供の頃から愛聴していたというエルトン・ジョン、フランク・シナトラ、キャット・スティーヴンス、ザ・ローリング・ストーンズなどの名曲たちが、カーステレオのカセットテープから流れるなど、細やかな演出も秀逸。

そして筆者としては何よりも、衣装に関してのこだわりも要となっているように感じた。そこで、衣装担当のパワレート・ウォンアラームさんからの貴重なコメントをいただいた。

「服は単なるファッションの機能だけではないことがあります。本作では『プアン/友だちと呼ばせて』の登場人物たちを通し、物語のメッセージを伝えることに成功しました。監督の前作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』も手掛けたメンバーによるもので、今回はさらにカラフルなコスチュームで迫力のあるストーリーを生み出しています。私は脚本を読んで分析し、登場人物を理解し、監督と話し合いを重ねました。」

その結果、下記のようなスタイリングが完成したという。

  • ボス:頑固な男。外見はクールで、内面は繊細で難しい。色としてはブラウントーン(画像下の元カノ、プリムから影響を受けたという設定だそう)。
  • ウード:ボスほど華やかでギラギラしてはいないが、様々な女性に感情が移り変わり、元カノたちが彼を見る目は厳しいものがある。彼の色はブルートーン。

元カノたちについても下記に;

  • アリス:「明るい朝の日の出」という監督の定義から、温かみのあるトーンを選択。最初は赤、オレンジ、ピンクでデザインしていたが、最終的に赤に決定。
  • ヌーナー:思春期はごく普通の女性像を柄のある服などで演出。次第に上品になり、夢を追う明晰さを表現。
  • ルン:クールなトーンを使用。当初、ウードとの関係をふまえて暗褐色で少し悲しくて鈍いような色彩。ルンに家族がいるとわかり、安心した時点で灰色から緑色に変化し、平和と安定を表現。

ちなみにニューヨーク撮影時の苦労話は数多く、タイで用意した衣装が使用できず、古着屋へ各シーンに最適な服を探しに行く、さらにはフィッティングのため同行願うなど、常にベストを尽くしたとのこと。

ともあれ監督との協働は、学びや発見の連続だったと強調。またそうした日々の取り組みが大画面に映し出された時、幸福度は2倍となったと語られた。


最後に監督のこだわりの一つであり、本作のカギとなる「カクテル」。メニューはすべて本作のためのオリジナルという。そしてなぜボスの職業をバーテンダーにしたかというと、監督自身が本作脚本執筆中に自身のバー「One for the Road」(本作に登場のバーと同名)をオープンするほど、バーを愛しているからだそう。

というわけで、ボスの母親の結婚相手が経営するパタヤのラグジュアリーホテルに主人公二人が立ち寄り、ボスが作るオリジナルカクテルで「ハッピーエンド!」となるはずが…


プアン/友だちと呼ばせて

新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー中
配給:ギャガ
©2021 Jet Tone Contents Inc.All Rights Reserved.


というわけで、「『ホテル』という名の思い出」をテーマにシティクルーズを楽しむ今回の「CINEMATIC JOURNEY」。次なる目的地は、それぞれの世代に思い出の一コマを届けてくれる都心の避暑スポットへ!


ホテル椿山荘東京が誇るプロジェクト「東京雲海」を当コラムでも度々、紹介したことがあるのだがこの夏限定(~9月末日)の演出はさらにアップグレード感たっぷり。

なぜなら、通常の120%増量のミストによる「“涼”雲海」に加え、ロクシタンのフレグランス「ミントヴァーベナ」の香りを乗せた「香る、東京雲海」も出現だから。

さらに、風鈴の小道や竹籠灯りなど(~9月19日)も風情溢れ、より一層の夏の思い出を飾ってくれそう。

そうした中で体感する、ネーミングもユニークな「ビアテラス×東京雲海~大人の夜ピクニック~」や、子どもたちにとっては、きっといつまでも忘れない夏休みの思い出の一コマになりそうな、ユニフォームを身に着けてホテルのフロントのお仕事体験ができる「なりきりホテリエステイ」(~9月16日)など、さまざまな世代がワクワクする試みが展開中だ。


『ホテル』という名の思い出」をテーマにシティクルーズを楽しんだ今回の「CINEMATIC JOURNEY」。フィナーレに用意したのは、前述の「なりきりホテリエ」や「大人の夜ピクニック」という話題に少しばかりリンクする映画『セイント・フランシス』

子どもと思いきや案外おとな顔負けのメンタルを持ち合わせているものだ。一方、「ルックスおとな」ではあるものの、メンタルは子どものまま?そんなケースも少なくない。

昨今の世相の変化を痛快に描写した本作は、ヒロインの女子二人組、悩み多き34歳のブリジットと6歳のフランシスを通じ、新たな生きるための視点をシェアしてくれそう!


セイント・フランシス

ストシネマ有楽町,新宿武蔵野館,シネクイント ほか全国ロードショー
©2019 SAINT FRANCES LLC ALL RIGHTS RESERVED


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うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



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