日本における旧暦10月の異称 として知られる「神無月」。その文字の並びを目にする度に、なぜだか夢見心地になってしまう。
今月16日まで開催中の食関連イベントの一つ「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2022」。その開幕に先駆け先月21日、初の試みとなる企画「グローバル美食パネルトークショー ~未来の料理を考える~」が行われた。参加されたのは、当イベントの発起人でもある巨匠アラン・デュカス氏をはじめ、「いすみ大使」(千葉県)も務める注目すべき女性シェフの一人、川副藍さん(下記写真中央に並ぶ二人)ほか日仏のバラエティに富んだ顔ぶれのパネリストたちだった。
多岐にわたるトークの中で印象深く心に響いたのが下記、デュカス氏のコメント。
それは今からちょうど4年ほど前、2018年10月16日付けの当コラムでも紹介したことのあるフィリピン・マニラに創設した次世代教育の一環ともいうべき、恵まれない子供たちのための料理専門学校におけるエピソード。
「現在、彼らの中から2名がシェフとなり、弊社のキッチンで働いています。人々と共有するクリエイションである料理の世界は、幸せをもたらし、そしてシェフという仕事が『夢』のある職業であると…」
というわけで、今月最初の「CINEMATIC JOURNEY」は、「シネマと夢見る神無月」をテーマに旅してみたく。
まずは「不朽の少女漫画with10年後」の実写映画化『耳をすませば』から。
前述のデュカス氏が語られた幼き日の思い出「さあ、今日は何を食べよう(=何を作ろうか)?」という祖母の一声から始まる温かな日常は、なんとも微笑ましく、同時に現在の氏のキャリアの礎になったに違いないと思った次第。
そんな氏のキャリアとどことなくクロスするシネマ『耳をすませば』は、作家を夢見る読書好きの中学生の雫と、チェリストを夢見る聖司が主人公の人気漫画を原作に、その10年後へとタイムトラベルする
❝Boys & Girls Be Ambitious!❞
そんなオリジナル作品が完成した。
一流のチェリストへの夢を追い求め、ローマにて修行を積む聖司との再会を同地にて実現することとなった10年後の二人。その気になる結末は劇場にて。
ちなみに、本作のプロデューサー、西麻美さんも小学3年生からの長きにわたる(?)原作漫画ファンの一人だという。
生みの親である原作者、柊あおいさんも興味を抱かれたと語る誕生から「10年後」の主人公、そして本作を見つめる私たちの「10年後+α」は、思い描いた現実と重なっているのだろうか?
『耳をすませば』
10.14 ROADSHOW
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
さて、神無月の今月末、もはやここ日本でも恒例行事的香りがするイベント「ハロウィン」。諸説ある中、初耳なのがアガサ・クリスティの著書のタイトルにもなっている『ハロウィーン・パーティ』にて、行われる余興の一つ「アップル・ボビング」(リンゴ食い競争)の起源。
それはかつてローマ人が11月1日ごろに開催していた、リンゴをシンボルとしていた女神「ポーモーナ」の祝祭に関連する説だ。よって、ハロウィンのシンボルカラーである黒とオレンジ、後者はポーモーナに由来するのではないかと?
そこで今回のテーマ「シネマと夢見る神無月」のキーワード、「夢」と「ローマ」、そして「ハロウィン」が三位一体となった「CINEMATIC JOURNEY」は、デュカス氏同様、料理というクリエイションで人々を夢想の世界へと招いてくれるイタリア料理の体験型レストラン「TAVOLA TAVOLA by ZILLION」の阿部洋平シェフ。
毎度アイデア満載の「ITALIAN JOURNEY」演出の創作源を尋ねた際、「日々の暮らしの中から…」とスマイル交じりに応じてくれた。なお「ブラック×魔女」をテーマに描いた今回の食卓には、黒、赤&紫のドレスコードで着席あれ!
ともあれ、そんな彼もまた私たちと同じく「夢見る少年時代」から「10年後+α」を邁進する一人だ。
うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中