シネマが香るアート展へ!(宇佐美浩子)

2014/05/06 14:15 更新



アクラム・ザタリ《明日にはすべてうまくいく》2010年
Courtesy of Thomas Dane Gallery, London © Akram Zaatari


「シネマが好き、アートも好き」また「アートが好き、ファッションも好き」そしてその逆もあり、こうした組合せは数知れず。というわけで、好奇心旺盛な方々と感動をシェアできそうな、「シネマが香る」2つの展覧会へ繰り出してみた。

 「映画をめぐる美術――マルセル・ブロータースから始める」と題し、東京国立近代美術館で6月1日まで開催している本展は、シネマ・コンプレックスをテーマに会場構成したというだけあり、最初の一歩から特別なワクワク感を味わえる。

映写機がくるくると回る映画館に迷いこんだかのような錯覚に陥りそうなブロータースの部屋を中心に6つの小部屋が設けられ、フィルム、ビデオ、写真の分野でグローバルに活躍する12人の作家たちの作品を観賞できるというスタイルだ。

ちなみにベルギー出身の作家、マルセル・プロ―タース(1924-1976)とは、詩人としてキャリアを積んだ後、オブジェや写真、短編映画の制作へと歩みを進めたという背景がある。よって英語のタイトル「Reading Cinema, Finding Words」は、無限のイマジネーションを含むキーワードと言えそう。

なお映像作品が多いため、本展をゆったりじっくり味わいたい派に向け、リピーター割引制度を初導入されたとのこと。

映画をめぐる美術――マルセル・ブロータースから始める


 
 アナ・トーフ《偽った嘘について》2000年[2007年、アントワープ現代美術館での展示風景]アントワープ現代美術館蔵
Courtesy Museum of Contemporary Art, Antwerp (M HKA) © photo: Ana Torfs

 
Graphic by © Hideki Inaba, 2014

 

次なる目的地は、東京・表参道にある「エスパス ルイ・ヴィトン東京」で8月17日まで開催中の「Steve McQueen(スティーヴ・マックィーン)」展。

アーティスト名を目にした瞬間、世代によってイメージする人物が異なる場合があるので、予めご紹介させていただくと――

1969年、ロンドン生まれの映像アーティスト兼映画監督。映像アーティストとしての作品は、ロンドン・テートギャラリー、ニューヨーク近代美術館、パリ・ポンピドゥーセンターほか、世界の著名美術館に所蔵されている。また映画監督としては、先日発表になった第86回アカデミー賞において作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した最新作「それでも夜は明ける」が、現在日本でも公開中だ。 

さて、本題の展覧会についてだが、「13年前、アーティストが別の作品制作のために訪れたカリブ海の諸島で、偶然見かけた不思議な魅力を放つとある青年に心引かれ、即座にカメラマンに記録させた。その映像が、このほどエスパス ルイ・ヴィトン東京の協力により一つの作品として完成し、世界初公開になった」などと聞けば、より一層感激度がアップするだろう。

美しく青い海、波の音がもたらす安堵感とドリーミーなひと時…

大きなスクリーンに登場する唯一の主人公となる青年、アッシズとイマジネーションの旅へ出かけては。

Steve McQueen(スティーヴ・マックィーン)


 
Ashes, 2014
©Louis Vuitton / Jérémie Souteyrat
Courtesy of Espace Louis Vuitton Tokyo




うさみ・ひろこ 東京人。音楽、アート、ファッション好きな少女がやがてFMラジオ(J-wave等)番組制作で長年の経験を積む。同時に有名メゾンのイベント、雑誌、書籍、キャセイパシフィック航空web「香港スタイル」での連載等を経て、「Tokyo Perspective」(英中語)他でライフスタイル系編集執筆を中心に活動中



この記事に関連する記事