ジャパンインバウンドソリューションズ中村社長に聞く
「旅人目線」で考える 「安さ」より「プレミアム」
昨年、1300万人を突破し、今年に入ってもそれを上回るペースで増加しているインバウンド(訪日外国人)客。流れをつかみ、自社のビジネスに結び付けるにはどうすればいいのか。ドン・キホーテのグループ会社でインバウンド対策のコンサルティングを主力業務とするジャパンインバウンドソリューションズの中村好明社長に聞いた。
流通業ならどんな分野であれ、インバウンド抜きに今後の成長は望めないと思います。国内のお客様向けの既存事業の延長線上で対策を考えるのはいけません。新規事業として組織や仕組みに投資する姿勢で取り組むべき。付け焼き刃ではもうからない。
専門部署を置き、「旅人目線」で考えることです。海外のお客様は基本的には言葉が通じず、地理にも不案内。ドン・キホーテは、08年から全店を免税対応にし、店内アナウンス、POP(店頭広告)、ホームページも多言語化。同時に店のある町ごとのマップも現地語で作り、各国で1000万部以上配布しました。出発地と到着地の両方をつなぐ動線を作ったから来店客を増やせたのです。
経済成長で生活に余裕ができれば、消費は個性化し、多様化する。それがいま、アジアの国々で起こっています。雇用の質も改善し、有休制度も整ってきている。結果、休暇を取るタイミングも多様化し、インバウンド客に今後も「春節特需」といった考え方のみで対応するのはもはや現実的ではない。通年対応で考える必要がある。
アジアでは最近、オーガニック食品への関心が高まるなど、消費者が質やこだわりを商品に求めるようになっている。ファッション分野の流通業も商品のデザイン、品質、店頭での接客サービス、あらゆる面でプレミアム感を高め、それを伝えることが重要です。「爆買い」は円安が引き起こした現象で、到底続くとは思えない。これからは、日本でしか味わえない価値とは何か、真剣に考え、提供する努力を続けた企業がインバウンド客の心をつかむと思います。
インバウンド客拡大のノウハウ提供
ディスカウントストアのドン・キホーテは、08年からインバウンド強化に乗り出した。海外での販促によるブランド認知向上と、実店舗でのサービス強化で、14年は700万人を超える外国人旅行客が同店に来店した。ジャパンインバウンドソリューションズは、ドン・キホーテがこれまで培ったインバウンド客拡大のためのノウハウを他の企業にも提供するため、13年に作ったグループ会社。