JR名古屋高島屋「スタイル&エディット」 エッジ利かせ〝ここしかない〟を集積

2020/08/08 06:30 更新


《販売最前線》JR名古屋高島屋「スタイル&エディット」 エッジ利かせ“ここしかない”を集積 常に前向き、挑戦続ける

 JR名古屋高島屋の自主編集売り場「スタイル&エディット」は、3年前に売り場を移動し、スペースを拡張した。地域を知り尽くし、ここだけしかないエッジの利いた編集は地域のトレンドに敏感な顧客の支持を集めている。スタッフ全員が常に前向きで、新しいものに挑戦し続ける姿勢が売り場に新鮮な空気を送り続ける。

(神原勉)

動画に予想以上の反応

 緊急事態宣言の解除以降、営業を再開した商業施設では夏物セールが前のめり気味で推移している。スタイル&エディットも6月19日から全面的なセールに突入した。前日の午後7時、同売り場発の動画をユーチューブの「ジェイアール名古屋タカシマヤ」のアカウントで配信した。今回から始めた新しい取り組みだ。

 15分ほどの動画で、販売スタッフ2人がお薦めの商品を紹介する。1人がモデルになって、もう1人が着こなしやポイントを説明する。売り場を舞台に自然体で、買い物客に接するような会話だ。

 これまで顧客に向けては、店の会報誌など紙媒体が中心で、ネットを通じて働きかけることは限られていた。旬を提案する売り場だけに、売り場の〝今〟をリアルタイムで訴えたいと、ユーチューブでの配信にチャレンジした。「これ、紹介したいね」とミーティングでのスタッフの提案で取り上げる商品は決まり、開店前の40分で撮影を終わらせた。

 配信開始とほぼ同時に、電話での問い合わせが2件、セールがスタートした19日には「これがあの商品?」とユーチューブで紹介したワンピースが人気を集めた。「反応は予想以上。しかも速い」(村澤藍子同店営業第2部グローバルセンスインターナショナルクリエイターズグループマネージャー)と評価する。電話や来店しての問い合わせと反応はアナログだが、ネットを介しての顧客との関係作りに手応えを得た。「もっと、いろいろなことができるのではないか」。来店動機や顧客との接点の拡大に期待する。

ユーチューブで紹介し人気の「ポステレガント」のワンピース

個性を競い合う環境

 スタイル&エディットは06年3月の開設。フロアはキャリア向けと位置付けられていた5階にあった。その後、17年3月の全館改装でフロアがテイスト別に再編成されると、モード&トレンドをフロアコンセプトにした4階に移転し、売り場も拡大した。国内外のクリエイターブランドが個性を競い合う環境でもまれ、エッジの利いたファッションとスタイルで存在感を高めてきた。

国内外のデザイナーブランドを中心に旬を提案する

 象徴的なのは高級ダウンコートだ。海外の人気ブランドやこれから人気になるブランドを中心に18年から大きく広げた。人気ブランドの上質なダウンコートを集積し、品揃えの幅も奥行きも広げることで〝コート平場〟のような、数量が揃い、選びやすく、買いやすい売り場となり、顧客の支持を集めた。8月初旬から仕掛け、先買い需要を取り込み、暖冬で全国的に防寒衣料が苦戦した昨シーズンも前年以上の数量を販売した。今冬物も新規に6ブランド、既存も含めると15ブランドを扱う。村澤さんの前任のバイヤーが、村澤さんが異動してくる前の2月までに買い付けを終えてくれていた。

 「今年は人気ブランドをタテ積みして、商品を切らさない」。昨シーズンの人気ブランドやブレークしそうなブランドは思い切った発注をかけた。配色やファーの付け方などで今年らしさを見せ、きれいめのカジュアルなラインも揃えた、前々シーズン、前シーズンとダウンコートの販売を伸ばし続けてきたが、今シーズンもこれまでの実績を下回らない数量を仕込んだ。大手セレクトや個店専門店が秋冬物の発注を絞る動きを見せている中で、〝強気〟と映るが、あくまでも自然体。8月のお盆前から仕掛け、ピーク時期には売り場のほぼ全面にインポートの高級ダウンコートが並ぶ。「あるべき場所に、あるべきものがある」ことが、顧客の信頼につながっている。

同じ方向へ思い切り

 自主編集のスタイル&エディットにとって、自店の顧客や地域の特性を、売り場作り、商品仕入れにどう反映させるかが運営のポイントだ。「販売スタッフの声を聞くことが何よりも重要」だという。スタッフは12人。全員が女性だ。今年配属された新人2人を含め、半数が若手。売れた理由や感じたことを話し合う。キャリアは違っていても、「向いている方向は同じ」。だから思い切った発注、提案ができる。エッジを鋭く磨くことができる。

顧客や地域の特性を反映させるために「販売スタッフの声を聞くことが何よりも重要」という

 村澤さんはスタイル&エディットに配属された後、しばらく離れていたが、今年3月にグループマネージャーとして復帰した。しかし2カ月たたないうちに緊急事態宣言が出され、本来なら仕入れや運営に飛び回っている時期だが、店も仕入れ先も休業。「それなら」と、売り上げ状況やブランド構成など売り場の立ち位置に真正面からじっくり向き合った。

 スタイル&エディットは売り場の拡大につれ、ブランドもテイストも広げてきた。現在、取り扱っているブランドは70から80にのぼる。「1、2年かけてブランドを絞り、同時にグレードを上げていきたい」というのが導いた方向だ。ブランドを絞る一方で新規のインポートブランドも導入し、トレンドに敏感な新しい顧客もつかんでいく。この2月の改装で4階に化粧品売り場が開設され、若い層の回遊が目立ってきた。イベントスポットでの期間限定ショップの打ち出しでヤングの取り込みも狙う。

(繊研新聞本紙20年6月29日付)

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