ケイト・スペードジャパンは、アマゾンのクラウドプラットフォームAWS上で、米インフォア社のERP(全社的業務統合管理)システムを稼働させるジェーエムエーシステムズ(JMAS)の「JMAS:M3オンAWS」を2月に稼働させた。
\■伸び盛り企業のニーズに合致
\12年11月、米ケイト・スペードの100%子会社となったケイト・スペードジャパンは当時、独自情報システムを持たなかった。このため、システムを全て作り上げるプロジェクトをスタートした。クラウドベースの柔軟なソリューションの選択は、急成長を支えるため短期間で低コストの導入が求められたためだが、導入フェーズの成功は「要件定義から最終テストまで、現場ユーザーが参画した」(竹林朋毅副社長兼COO=最高執行責任者)ことも大きな要因という。
\売上高が100億円を超え店舗も80店を数える伸び盛りの企業が選んだのは、ワンストップで極力カスタマイズを抑え、短期間に低コストで導入できるソリューションだった。そのニーズの明確さと、サポート企業の深い理解が、このプロジェクト成功の第1の要因だ。「プロジェクトに携わる人の能力・人柄、組織の体制」がJMASを選んだ理由ともいう。
\■要件定義から現場ユーザーが参画
\プロジェクトは、要件定義の段階から現場のユーザーが参画。当時は「これ以上店舗や品番が増えたら限界」という声も上がっており、現場も新システムを心待ちにしていた。同時に「カスタマイズは最小限に」という条件も理解しプロジェクトに臨んだ。「一番大変な要件定義で、現場ユーザーの力が発揮」された。MDから米国へのオーダー、会計まで全プロセスの2カ月間にわたる最終テストにも参加。その中で気付いたことをマニュアルに書き込み、ユーザー自身のものとしていったという。
\並行して「スペード・スタンダード・プロジェクト」で、全業務の手順書の整備に取り組んだ。各業務の責任の所在や重複を整理し業務を標準化し、ベストプラクティスの共有をしやすくするためだ。このプロジェクトを管理するのがプロジェクト・マネジメント・オフィス(PMO)で、人員が限られたIT(情報技術)スタッフと密接に連携し、要所要所でサポートに入った。この連携によるマネジメントが現場のプロジェクトに対する理解と協力を支えた。
\■効率化実現、次はECの在庫統合へ
\まだ稼働したばかりだが、POS(販売時点情報管理)システムを除く全てをクラウド上で安定的に運用している。中でも配分機能は入力の制約がなくなり大幅に効率化し、1時間かかっていた作業が10分でできるようになった。輸入仕入れ管理では、電子メールによる進捗(しんちょく)情報のフォワーダー(貨物利用運送事業者)とのやり取りと「エクセル」(表計算ソフト)入力を自動化し、1人分の作業を削減した。
\今後はEC(電子商取引)サイトとの在庫統合に取り組む。現在は店舗のみのポイントシステムもECに導入する。店舗で在庫管理に利用しているiPodの接客への活用も視野に入れる。