カナダ出身で、日本が大好きな親日家アーロン・ベンジャミンさん。19年、きもののリメイクや反物を使ったブランド「イチジク」を立ち上げた。弁護士としての顔を持つが、「クリエイションやファッションが好きで、日本の伝統文化や職人の技術などにも憧れがあった」と、きものの素晴らしさを広めるビジネスを進行中だ。イチジクは「サステイナブル(持続可能)なラグジュアリーブランド」として、さらにアイテムの拡充と認知度アップに注力している。ファッションの比重が高くなっているが、日本とカナダを拠点に弁護士活動も行いながら「好きなことを自由に、楽しんで取り組んでいきたい」という。
(古川伸広)
日本文化が大好き
アーロン・ベンジャミンさんは日本の大学に留学するなど日本に親しみがあり、日本に遊びに来た時に友人からきもの30着をもらいカナダに持ち帰る。「この素晴らしいきもので、何か面白いことができないか」と、好きだったネクタイにリメイクしたのがブランドの始まり。父親は音楽のプロデューサーで、祖父はカナダのスーツ企業を創業するなど、クリエイティブの血が流れていたともいう。
ネクタイはきもの1着から約20本製作。シルクやちりめんなど日本の高級素材と染めなどの独特の柄がよりネクタイの付加価値を高めている。「自分を表現できる個性的なものが多く、スーツスタイルのアクセントにもなる」という。価格は2万7500円。きもののリメイクは「サステイナブルにもつながり、日本文化の良さを自分なりに伝えていく」として、ほかにもハンカチやチーフ、蝶ネクタイも製作。
販売はネット販売のみで、口コミなどで徐々に広がり、顧客からの「スーツはないのか」との声にスーツも製作。しかし、ネクタイはきもののリメイクでできたが、スーツとなると難しく反物から製作することに。カナダでは作るところがなく、日本でようやく製作してくれる職人と出会い実現した。
亀甲や市松模様、絞りなどのスーツやジャケット、スリーピースなどで、「表地と違った裏地の柄も魅力」と、あえて裏地を使ったスーツも製作。反物を選んでもらい、限りなく生地を有効に使って無駄をなくすオーダースーツで対応する。価格はジャケットが50万円、スーツ75万円など。西陣や京都のオリジナルきものブランド「kaonn」のオリジナル生地を提供してもらうなど、「最高級の生地を使った自分だけの1着」で、付加価値も高めている。
日本人にも着て欲しい
顧客は外国人が約80%を占める。「きもの柄はオリジナル性が高い一方で、やや派手な仕上がりの商品が多く、日本人が少ない」と見ている。外国人は日本製にクオリティーが高いイメージがあり、きもの人気も後押ししている。現在、コロナ下でインバウンド(訪日外国人)需要が見込めないが、日本在住の外国人も多くアプローチしている。日本人にも「もっと個性のあるスーツを着て欲しい」と、ワインバーなどでトランクショーも始めた。
客からはレディスのドレスやスカート、スカーフなども作って欲しいとの要望があり、検討中だ。「きものの生地の品質、日本の技術を背景に、もっときものの良さを広めていきたい」と、寺で茶会をしながらのオーダー会など体験できる場、インフルエンサーなどと組んだ情報発信を強めていく考えだ。
コロナ下でカナダと日本の行き来が難しい時期だが、カナダでもきものの洋装アイテムを広めていく。また、カナダには留学生やビジネスなど日本人も多く、現地の日本人の相談など弁護士活動も行い、今後も両国でビジネスを続ける。