アメリカで同性婚が合法化されたこともあり、今年のゲイプライドは例年以上の注目を集めた。ベルリンでも6月27日に開催され、初参加することが出来た。
ベルリンのゲイプライドは”Christopher Street Day in Berlin “通称CSDと呼ばれ、1979年から毎年開催されており、参加者は100万人にも及ぶヨーロッパ最大級のパレードである。さらには、近代ヨーロッパ史で初めてセクシュアルマイノリティの人権運動が展開された都市でもある。
パレードは西エリアからスタートし、戦勝記念塔のSiegessäuleを通過し、ブランデンブルグ門でフィナーレを迎えるというコースになっており、爆音で音楽をかけたトラックが何台も通り過ぎた。
トラックは企業が出しているアドトラック的な要素で、お揃いのTシャツを着て、フラッグを振ったり、歓声をあげたりするだけで、露出も派手さもなかったけれど、周りを囲みながらパレードを闊歩する人々のコスプレの華やかさとユニークさに夢中になってしまった。
ストリートの真ん中にはド派手なステージにDJ、スモークまで焚かれ、ストリートの途中にも停車したトラックがクラブ状態。その周りで踊るまくるのは、性別、国、年齢など誰も何も気にしない同士たち。最高にハッピーなオーラとパワーをもらった。
夢中で写真を撮っていたら、プレートを掲げた1人の日本人と出会った。話を聞くとTokyo Rainbow Prideの代表者で、単身で今回のCSDに参加しているのだと言う。
さらに、日本でも代々木公園で毎年開催されていることを初めて知った。まだまだ規模は小さいけれど、年々認知をあげてきていると言う。ちなみに代表の杉山氏はもとは”女性”。日本で顔も名前も出して活動することだけでもとても勇気がいることだと思う。
日本にいた頃からゲイの存在は身近であったし、才能豊かでファッションや音楽の世界で活躍している人もとても多い。何より個性的で魅力的な人が多い。しかし、同性愛者ではない私たちには分からないところで、偏見の目や差別を受けてきた事実は誰しもが持っていることだろう。
日本の技術やセンスは世界基準であり、トップクラスだと思うことも多い。しかし、こういった人権問題や語学、政治などに関しては残念ながらとても閉鎖的だと感じる。
自己表現が薄いのもこういった背景が影響しているのではないだろうか。同性愛者にオープンで、国も性別も関係ない世界的なゲイシティーとして知られるベルリンに住んでいると余計に思うことである。
何しろ元市長のクラウス・ヴォ-ヴェライト氏がゲイであり、世界有数のクラブBerghainが好きというのだから、もうどこを取っても文化が違い過ぎる。
それが全て良いとは一概に言えない。けれども、”個”と”自由”は私たちが生まれ持って得た権利なのに、それを諦めて、与えられた不自由の中で必死に小さな自由を探しているだけの人が多いと感じるのは私だけだろうか。
スコールのようなどしゃ降りが過ぎ去った後、メインストりートにはうっすらと虹が浮かんだ。テーマカラーであるレインボーが現実とあって現れた奇跡の瞬間である。
宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。