UK発”BoilerRoom”にみる世界基準(宮沢香奈)

2016/07/30 00:00 更新




BoilerRoomという存在を知っているだろうか。テクノやハウスに限らず、ベースミュージックやHipHopなどダンスミュージック好きなら誰しもが知っているであろう世界的なライブストリーミングメディアである。

世界各地で活躍しているアーティストのライブやDJの動画を生配信しており、現地の旬なレーベルやアーティストを知ることができ、滅多に見れないアーティストのプレイをリアルタイムで体感出来たりするため、とても人気がある。

BoilerRoom(以下、Boiler)は2010年にロンドンでスタートし、現在は、ロンドン、ベルリン、NY、ロサンゼルスが主な拠点となっている。それ以外にも世界のあちこちでイベント的に不定期で配信が行われいる。数年前には東京にも上陸し、話題となった。

Boilerの人気の理由は出演アーティストが一流であることだけではない。各地の有数なクラブやスタジオ、時に自宅までもが会場となっており、独自のサウンドシステム、PA、撮影機材を設置し、プロフェッショナルチームによる完璧な環境の中で配信を行っている。

そのため、どこよりも良質な音を聴くことが出来る。さらに、特質なのは、クラブイベントと違い、会場を一切明かさないため、一般入場できなくなっている。中に入れるのは関係者や招待者の限られた人のみとあって、プレミア感も増すのだ。

日本にいた頃からずっと憧れていた私は、いつもパソコンの前で指を加えながらBoilerから配信される映像を食い入るように見ていた。初めて生で体感したのは、2013年にアムステルダムの人気フェスDEKMANTELに参加した時だった。

ブースを囲うようにスピーカーが設置されたBoilerの特設ステージは、その音の良さと会場の一体感に鳥肌が止まらなかったのを覚えている。会場が野外であってもパーフェクトな音響、そして、カメラワークなのだ。

 



 

それ以降もラッキーなことに数度とその完璧な現場に行くことが出来た。ベルリンの配信場所だったstattbadは残念ながら閉鎖してしまったため、そこでは体験できなかったけれど、有数のクラブを借り切って行った時も普段の音響より遥かに良い音が出ていた。

しかも来場者はオシャレな美男美女が非常に多いのも特徴で、絵になる男女が踊りくるってる様子がワールドワイドに配信されているのだ。

そんな中、ベルリン某所にあるBoilerRoomのスタジオに行かせてもらうという貴重な体験をした。

34℃という猛暑の中、友人と迷いながらようやく辿り着いたスタジオはシンプルで無駄がなく、ひっそりしていた。この時は、ベルリンのアンダーグラウンドレーベルSamurai Horoによるプログラムが配信されており、以前インタビューさせてもらった日本人アーティストのENA氏がプレイするということで、特別に見学させてもらった。

(当日の配信の様子はこちらのアーカイブからご覧頂けます)

直前まで詳細が明かされなさ過ぎなBoilerの、しかもオフィスのようなスタジオでよく分からない高揚感に浸っていたら、日本人のカメラマンがクルーにいるのを発見して驚いた。しかも、一緒に行った友人と偶然繋がっていてビックリしながら、そのカメラマンである田中弘雄氏を紹介してもらった。

”世界のBoilerRoomで日本人が働いてるなんてすごいなーと感心しながら話を聞いてみると、ロンドンに住んでいた時に、Ninja TuneやHyperdubなどのレーベルと仕事をしていた敏腕の映像カメラマン。

その時に手掛けた作品がBoilerのディレクターの目に止まり、ベルリンへ移住してからカメラやシステムのオペレーションを手伝うようになり、徐々に仕事が増えていったという。現在はフリーランスとして、ポストプロダクションの仕事を請け負っているとのこと。




 

プレイ終了後にインタビューを受けるENA氏にくっ付いて行って、取材するBoilerクルーをちゃっかり撮影させてもらったが、なかなか見ることが出来ない貴重な現場を見させてもらった。

ENA氏をはじめ、日本人アーティストの活躍は近年本当に目覚しいものがあり、現地に住むローカルとして実感できているのがとても嬉しいが、日本人クリエイターの活躍も新たに知ることが出来て、とても有意義な日となった。こうゆう出会いがある度、自分への活力となってゆくのを感じる。

 


 

*正式な取材ではないため、あくまでも個人のコラムとしてこのレポートを書いています。スタジオの場所は非公開とさせて頂きます



宮沢香奈 セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、04年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。 また、フリーライターとして、ファッションや音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。12年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、14 年6月より移住。



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