最新 通商事情② 日本が締結したFTA

2019/11/10 06:29 更新


【知・トレンド】《入門講座》最新 通商事情② 日本が締結したFTA

 日本はFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)(以下、FTA)を通じた経済連携の積極的な推進を成長戦略の一つと位置づけ、各国との交渉を進めてきた。現在、日本の発効済みFTAは14カ国・3地域に及ぶ(19年3月時点)。

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 02年に発効した日本・シンガポール経済連携協定を弾みとし、今日までにメキシコ(05年)、マレーシア(06年)、チリ、タイ(07年)、インドネシア、ブルネイ、ASEAN(東南アジア諸国連合)、フィリピン(08年)、スイス、ベトナム(09年)、インド(11年)、ペルー(12年)、オーストラリア(15年)、モンゴル(16年)、TPP11(18年)、EU(19年)との間でEPAを発効させている。この結果、FTA発効済国・地域との貿易が全体に占める比率(FTAカバー率)は23.3%から36.5%(17年貿易額ベース)にまで上昇した。一般にFTAカバー率の上昇は、輸出品の特恵関税率の恩恵を受ける機会を増やすが、TPP11と日EU・EPAが発効されたことにより、効果的にFTAを活用することで新たな顧客・市場開拓やサプライチェーン全体での経費削減が可能となり、国際競争力の強化を推し進める契機となるだろう。

 これまでのFTAでは自動車や鉄鋼、電機・電子製品などの品目で、相手国における関税削減・撤廃等の市場アクセス改善を実現してきた。近年ではサービス・投資や政府調達などを含む包括的かつ高い水準の貿易自由化を達成するFTAの実現、またメガFTAを推進する傾向がみられる。政府はTPP11や日EU・EPA交渉において、WTO(世界貿易機関)ルールには含まれていない高度な知的財産の規定や越境取引によるサービスの自由化等を盛り込むよう努めた。近年の保護主義的な動きや一部の国による市場歪曲的な措置への懸念が広がる中、自由貿易を推進する立場を示した内容となっている。

 現在日本は、中国、韓国、トルコ、コロンビア等とFTA交渉中であるが、なかでも期待が高いのがASEAN10カ国および日中韓、インド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)である。交渉は13年にスタートし、実現すれば世界人口の約半分、世界のGDP(国内総生産)および貿易総額の約3割を占める広域経済圏が形成される。同地域ではすでに2国間のFTAは多数存在しているものの、RCEPは、生産工程が複数国にまたがる場合にFTAを活用しやすくすると期待されている。18年11月のシンガポールでの首脳会議において19年の妥結に向けた共同首脳声明が採択された。議論の加速が必要な分野については追加的に交渉会合を開催することなどが合意され、交渉は大詰めを迎えている。

 日本からFTA相手国へ輸出を行う企業の利用率は48.2%に上る(18年度ジェトロ日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査)。とりわけ自動車・同部品では66.7%の企業が利用しており、次に医療品・化粧品、化学と続く。ここ数年では輸出企業数の多いベトナムやインドでの利用率上昇が顕著である。

(伊尾木智子ジェトロ国際経済課/繊研新聞本紙19年5月13日付)



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