「Littermate」(リッターメイト)は、生物学とストリートファッションを掛け合わせたアパレルブランドだ。作り始めたのは東京大学の学生たち。アカデミックなコンセプトに心引かれるファンとストリートファッションが好きなファンの両者を増やしている。
(小坂麻里子)
研究テーマを商品化
商品は「デザインとして格好良く、かつ生物学研究者から見てもテンションが上がるもの」。立ち上げた一人である増田雄一朗さんの描くポップなイラストと、細胞や解析結果などをリアルに表現したグラフィックの2軸で提案する。
アイテムは実験用マウスやたんぱく質構造、免疫細胞をモチーフにしたTシャツやトレーナートップ、パーカ、ジャケットなど。
免疫抗体マークのネックレスや実験用マウスに付ける識別タグを人間サイズにしたイヤーカフなどもある。税抜き3000~1万2000円。
〝実験用マウスシリーズ〟は19年の開始以来、20種ほどに増えた。夜行性の特性を生かし光を当てて活動パターンを制御したマウスや、ゲノム編集し白い毛と黒い毛を生やしたマウスなどをイラストで表現する。
ECサイトのほか、ラフォーレ原宿や新宿マルイアネックスなどでの期間限定店、学祭、アーティストが参加するイベントなどで販売する。
客層は若者が多い。ストリートファッションが好きな人と、アカデミックが好きでコンセプトに引かれる人とに分かれる。「普段は交わらない層がリッターメイトの服をきっかけに仲良くなるなどファン同士の交流が生まれている」という。
アンビバレント意識
スタートしたのは当時、東京大学4年生の占部雄飛さんと増田さん。占部さんは元々服が好きで、理学部で生物学を研究しながらバンタンデザイン研究所に通い服飾を学んだ。イラストが得意な増田さんに声を掛け、19年に立ち上げた。
コンセプトが確立したのは、同じく生物学を研究する鈴木ゆりあさんが加入した時だ。3人が研究する分子生物学は「無機質、精密、ロジックな一方で、まだまだ未知な部分が多く、変異体を作るなど自由でアウトローな部分もある」と分析。「生物学は相反する考え方を同時に有するもの」と捉えた。
一方、ストリートはスケートボード、ヒップホップなどのカルチャーから生まれたファッション。カルチャーに対する真摯(しんし)な熱意で発展したストリートファッションと、好きなことを実直に行う研究は親和性があると考えた。
さらに、ストリートファッションの発展は「自由を求めトラディショナルを破壊してきたことによる」。生物学や研究者の〝真面目で頭が固い〟といったネガティブなイメージを破壊したい思いもある。
生物学の発表は学会など内向きが多く、外への発信が少なかった点も着目した。「リッターメイトが風穴を開けたい」と考える。
立ち上げた3人は大学院を卒業し、後輩に引き継いだ後はサポートに回る。常時5人ほどの在学生や服飾専門学校生が商品企画、撮影など運営に携わる。
昨年はアパレルの新作や実験用マウスのアート作品などを展示するイベントを開催した。
今後は新作の発表やイベントの開催を強化していく。夏ごろにアートとアパレル商品を組み合わせたイベントを予定している。