ローカルでいこう&ファクトリー4

2015/10/13 11:29 更新


現場のライブ感を大事に


 服作りの工房にデザイナーをスタッフとして加え、新たなブランドの形を目指すザファクトリー(東京都町田市)。今春夏から立ち上げた自社オリジナルのメンズブランド「ビサビワ」は大手百貨店を含め約10社に卸し先が広がった。


作る力の優位性

 代表の河西和智は「そもそも企画・デザインと生産が分離していることが問題。80年代のマンションメーカーのアトリエのように同じ現場で一貫型の服作りをすることで発想の自由度も広がる」と強調する。河西は学生時代から映画衣装の製作を手掛け、自分でデザインから縫製までこなした。5年前にザファクトリーを設立。現在、縫製経験のあるベテランから若手まで自社スタッフ(バイト含む6人)を揃え、布帛でもカットソーでも対応可能で小回りが利くのが強み。デザイナーブランドを中心にしたOEM(相手先)ブランドによる生産)でフル稼働状態が続く。

 今、国産回帰の流れから、限られた国内工場のスペースは大手企業に席巻されかねない状況。さらに人手不足が追い打ちをかける。将来的に小ロットの新興ブランドの作る場がなくなりかねない。それによって「市場に出るチャンスも減り、ファッションの多様性が失われてしまう」と危機感を強める半面、河西は「これからは作る能力に対するプライオリティーが高くなる」と見込んでいる。


偶発性重ねて

 オリジナルのビサビワは、河西の姿勢に共感し、昨年入社した新興メンズブランドのデザイナーの畑中誉士雄を交え、アイデア出しから全スタッフが参加し、互いに意見を言い合いながら、現場が一体となったライブ感を大切に作り上げる。「試合中のサッカーのように状況に応じてポジションを変えながら。時には脱線もしながら、偶発性を積み重ねることで、個人では到達できなかったクリエーションにたどり着ける」と畑中は思いを強くする。

 ビサビワは、自社のアトリエの力を生かし、小売店も、消費者もチームのように参加してもらえるような服作りが可能なはず。「音楽にたとえれば、CDは爆発的に売れないが、ライブ活動で地道にファンを増やすような存在でありたい」。河西は一定のリズムでミシンを踏み続ける。(敬称略)

(繊研 2015/09/10 日付 19317 号 1 面)

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