どう作るどう守る④人材

2015/09/22 06:05 更新


「作る人」と「売る人」が対等の環境へ

 産地企業で30~40代の若手経営者が育ってきた。産地内外の枠を超えて展示会を開いたり、物作りをしたりといった動きも始まっている。一方で、物作りを支える技術者の高齢化は深刻だ。定量化の難しい職人技を次世代に、どう引き継ぐのかが喫緊の課題となっている。

分かりやすく

 若手経営者に共通するのはアパレルメーカーや流通の担当者との直接対話を積極的に行おうとしている点だ。この20年間で物作りの仕組みが大きく変わり、生産の現場とアパレル・小売の担当者が話し込んで物作りをする機会は減ってしまった。その結果、物作り側からは理解できない事態が起こり、「百貨店の担当者が機屋に発注する時に生地の反数ではなく製品の枚数で注文を入れてくる」といった嘆きが聞かれるようになった。

 発信力の強化を目指す産地。「最初は展示会で説明が2、3分で終わってしまった」という話も多いが、テキスタイル展示・商談会「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」(PTJ)やジャパン・ベスト・ニット・セレクション(JBKS)の参加企業は、回を重ねるごとに、アパレルや流通の担当者に物作りを分かりやすく提案する方法を身に着けている。次に目指しているのが同じ目線で、そして対等に話をできる人々との出会いだ。「物を作る人」と「物を売る人」。両者が揃わなければファッションビジネスは成り立たない。その思いが強い。

 存在感の高まる企業の中には若い従業員が増えている企業もあるが、まだ少数派だ。採用したくても資金がなくて見送る企業もある。ただ、若者を採用した企業は「彼らが20年、30年と働き続けられるような企業にしたい」と経営者の発想も前向きなのが特徴だ。

海外にも目を

 物を作る側と発注する側の両者で、次世代を担う人材作りに挑戦するケースもある。桐生の染色・加工の土田産業は3月、東京モード学園の学生3人を受け入れた。工場敷地内の染色体験施設「カラーズ」を拠点に、同地区の織物や編物、刺繍、縫製工場でも研修を行った。土田社長は、「桐生産地がクリエーティブな物を作れる産地であることを認識してもらえたのは大きい」と総括し、「物作りの現場がデザイナーの考え方を少しでも理解できるようになれば、大きなプラスになる」と話す。

 海外に目を向ける企業も増えてきた。特徴のある素材を作り続けるには、日本市場だけを見ていては限界があると気が付き始めている。9月の伊素材展「ミラノウニカ」には48社・団体が出展する。前回の34社・団体を大きく上回る。仏プルミエール・ヴィジョンに出展する企業も増加傾向にある。染色加工場、吉田染工は海外展に若手を派遣して経験を積ませることで企画力を強化するほか、社内でチームを組んで市場調査や商品開発を推進する。英語を話せる人材を採用したら他の社員も勉強を始め、英語を話せる人材が増えたといった例も出てきた。

(繊研 2015/06/11 日付 19256 号 1 面)

【1】どう作るどう守る①単位の違い 【2】どう作るどう守る②連携 【3】どう作るどう守る③技術

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