グローバル大手小売り3社の直近四半期業績を読み解く

2018/09/17 06:30 更新


《ニュースサクサク》グローバル大手小売り3社の直近四半期業績 企画、生産、販売の精度で明暗 インディテックス、ファストリが好調 来期以降は各社に課題

 グローバル大手小売り3社の直近四半期業績が出揃った。前年同期が2ケタ増収増益だったインディテックスは今第1四半期も増収増益を維持した。ファーストリテイリングは「ユニクロ」がけん引し、2ケタ増収増益だった。苦戦を強いられたH&Mは、冬物の不振を受けた第1四半期に続き、3~5月も売り上げが予想を下回り、減益を強いられた。

(柏木均之)

主力ブランドの業績に差

 インディテックスの2~4月業績は、売上高、総利益、営業利益の各段階で1ケタの増収増益だった。伸び率が低く見えるが、16年、17年も2~4月で増収増益を果たしており、2年連続で上昇した前年同期のハードルをクリアして、18年度も第1四半期業績を伸ばしたことになる。

 ファーストリテイリングの好業績は売上収益の8割を占めるユニクロの好調が寄与した。とりわけ海外は中国などアジアでブランド認知が高まり、売り上げの伸びとともに粗利率が向上した。国内でも店舗関連物流費が減ったことに加え、3、4月の気温上昇で夏物がよく売れたことで収益性も上がった。

 厳しい結果となったのがH&Mだ。第1四半期(17年12月~18年2月)の在庫を抱えていた上、春夏物の販売も想定を下回り、物流網の再構築の過程で生じた不具合が米国やフランスの商売に影響を与えた。3~5月は微増収にとどまり、粗利率も低下、営業利益は2ケタ減益となった。

 インディテックスは、主力の「ザラ」で、生産した商品をスペインの物流拠点に集め、全世界の店舗に届ける仕組みと、店頭での売れ行きに応じて潜在ニーズを早い段階でつかみ、シーズン中の商品企画や生産スケジュールに反映する仕組みが機能していることが、3年連続の第1四半期増収増益につながった。

 ファーストリテイリングは、昨年から本格化した「有明プロジェクト」でサプライチェーン全体の商品量を可視化し、生産、物流、販売の各段階で情報共有が進み、期中の在庫を適正量で維持し、店頭に必要な量の商品を供給できるようになってきたことが、好業績の要因と言える。

買い物体験の質の向上を

 H&Mが直面している不振は、実は前年下期からその兆候が見えていた。17年度第3四半期(6~8月)で夏物の在庫過多から値引き販売が増え、続く第4四半期(9~11月)も売れ行きが伸び悩んだ。前シーズン在庫を抱えた状態で次の四半期を迎える悪循環が18年度の第2四半期も続いたことになる。

 カール・ヨハン・パーションCEO(最高経営責任者)は「在庫の増大は販売不振が理由であり、主力のH&Mで適正な商品構成ができていないことが大きい」とする。下期以降、H&Mではネットとリアルをつなぐ買い物体験の質の向上と、「商品もデザイン、価格などの点であらためて見直す」考えという。

 通期、あるいは来期以降も成長を続けるには他の2社にも課題がある。ここ数年、好業績のインディテックスは売上高、利益のハードルが年々上がっている。ここ数年で10億 ユーロ をデジタル関連技術に投資しており、店頭とネットをつなぐ買い物体験の利便性向上をテコに顧客の拡大を狙っている。

 ファーストリテイリングの場合、ユニクロのブランド力がアジア市場で高まり、売り上げも伸びているが、欧州や北米での認知がまだ弱く、国内も例年、夏物消化と秋物立ち上がりの端境期となる6~8月に起きる収益低下の解決が課題だ。「ジーユー」も3~5月は増収だったが、ヒット商品に恵まれず減益だった。

 このため、同社はユニクロの国内事業で6月以降の集客につながる話題作りと情報発信を強めて活性化する考えだ。ジーユーもニーズを商品や生産、販売に反映するスピードを上げつつ、増やしすぎた品番を絞り、マストレンドの商品をしっかりしたマーケティングで売り、業績回復を目指すとしている。

(繊研新聞2018年7月23日付けから)



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