15年前後から火が付いた古着ブームを受けて、古着のリメイクブランドが注目される機会も増えている。17年春夏にスタートし、伊勢丹新宿本店の催事などで話題となっているのが、粕谷栄莉子さん、清水亜樹さんが手掛ける「マリオンヴィンテージ」だ。カジュアルでジェンダーレスなデザインが多い古着リメイクブランドの中で、女性らしさを意識させるデザインが支持されている。
◆入荷日は争奪戦
二人はセレクトショップのシェルの出身で、粕谷さんはデザインやバイイング、清水さんは販売などを担当していた。マリオンヴィンテージは、16年年末に同社の中で設立。「ビンテージブームが盛り上がる中で、シェルの店頭でも裾をカットしたり、スリットを入れたりした古着のデニムパンツが売れていた」と粕谷さん。リメイクの際に出るデニムの端切れをパッチワークして作ったコルセットベルトが最初の商品だ。
16年12月からシェル代官山店で商品を売り出すと、「SNS(交流サイト)の入荷告知を見て投入日に争奪戦がおきるくらい」にヒットし、手応えを感じた。その後、シェルが17年春夏末をもってクローズすることを受け、同社の山崎嘉子社長に背中を押される形でブランドとともに独立。生産面では、「シェル時代からお付き合いのある工場が、手間がかかるリメイクブランドにもかかわらず応援してくれており、それがうれしい」と話す。
ちらりと肌がのぞくデザインやボディーラインが出るシルエットなど、古着リメイクには珍しいセンシュアルな要素が特徴だ。17年春夏物で人気だったのは、スカーフをはぎ合わせて作ったロングスカート(2万9000円)や、50年代の仏のデッドストックのシーツ生地を使って作ったというノットディテールのタンクトップ(2万5000円)など。ロングスカートはベアワンピースとしても着こなすことができ、タンクトップはノットを前でも後ろでも結べるなど、着方によって何通りも表情が楽しめるデザインも多い。
粕谷さん(右)と清水さん
◆体現するのが重要
「今は可愛いだけでは商品は売れない。着方の提案まで求められるし、自分たち自身でブランドを体現することが重要」と清水さん。その言葉通り、ブランドの公式インスタグラムには、清水さんがモデルになり、粕谷さんが撮影した様々な着こなしがアップされている。インスタグラムを通してファンになる層も多く、実際、バイヤーからもインスタグラム経由で連絡が届くケースが少なくないという。
17年春夏は、伊勢丹の3月と5月の古着を中心とした催事で販売。30代前後の客を中心に、親子客など幅広い世代を集めたという。「ビンテージ好きの感度の高い人たちの間では、なんとなくリメイクブランドはタブーという空気がある。それを越えて買ってもらえたことがうれしい」と粕谷さん。
17~18年秋冬からは、本格的に個店専門店などへの卸販売も開始。ブランドとしてステップアップを目指す。「今はインスタグラムでの発信力で話題が先行している部分もある。今後は、ブランドを着実に育てていきたい」と二人。