圓井繊維機械が天然ガス由来のPOM繊維を開発 PLAを複合し環境配慮

2023/06/06 06:27 更新


POMとPLAを紡糸し、生地化。アウトドア関連企業が関心を持っている

 繊維機械を主力とする圓井繊維機械(大阪市)は、ポリアセタール樹脂(POM)とポリ乳酸(PLA)を複合した繊維を開発し、糸・生地化して用途開拓に向けた訴求を始めた。キャンプ用品などのアウトドア関連企業が関心を持っているという。展示会への出展などで需要を探り、量産化を目指す。

 開発した繊維の訴求ポイントは、環境負荷の低さと機能性。POMの主原料は天然ガス原料のメタノール。プラスチック製品材料の一種だが、化石燃料由来ではない点に着目した。機能については抗菌性、耐薬品性、耐摩耗性、接触冷感性、速乾性を備える。さらにPOMとPLAを複合すると、PLAが分解する時に発生する乳酸がPOMを酸分解する効果があり、複合した繊維自体も生分解すると見られる。

 POMとPLAの複合については10~14年にかけて京都工芸繊維大学で行われた。複合した樹脂で射出成形によるプラスチック製品を作ることが目的だった。その過程で「複合樹脂の射出成形品が大きな伸びを示すことがわかった」という。この特性を繊維に応用し、「延伸して細い繊維になる可能性がある」と考え、繊維開発に着手。一方、物性研究に協力していたタイのラジャマンガラ工科大学では、POMとPLAの複合繊維の生分解性が偶然発見された。

 糸、生地の開発・生産に向けては、プレジール(大阪府豊中市)が繊維に適したPOMの製造と繊維の物性研究を担い、圓井繊維機械が繊維加工技術を生かした繊維および生地の開発、ハルテック(福井県坂井市)が横編みやタオル用のパイル織物などの生産を担う。

 一方で21年に、三菱ガス化学が二酸化炭素(CO2)からメタノールを製造することに成功。現在、事業化に向けて量産プラントを建設中だ。量産が実現すれば、「CO2由来のメタノールから作られたPOM」として、POMのさらなる環境負荷の低さを訴求できる見通し。「将来的には空気中のCO2を原料にしたメタノール生産も期待されている」。

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