《めてみみ》舌を喜ばせる

2021/01/25 06:24 更新


 不要不急の外出を控えたせいばかりではないが、めっきり服を買わなくなった。コロナ下で買ったのはストレッチが利き、シワにならず、家庭で洗濯できるセットアップくらい。会計時にジャケットの価格だと思っていたのがパンツ込みと知り、安さに驚いた。

 ただ、セレクトショップで買った合繊タイプは、静電気のせいなのか、ほこりがいっぱい付いてしまう。しかもなかなか取れない。こういう服に出合ったのは久しぶり。もう買わない。早くくたびれてくれないかとさえ思う。

 ウールを中心にしたスーツの市場は縮小の一途だ。コロナ禍が終息しても市場は元には戻らないとの見方が強い。ところが梳毛を中心に扱う商社の担当者は「ブルーオーシャン」という。市場が縮むと見られているだけに新規参入は考えにくく、撤退するところも多い。「いかにシェアを高めるか」に知恵と力を注げば、可能性が開けてくるのだと。

 会社帰りに、緊急事態宣言後もぽつぽつともるのれん越しのカウンターをのぞくと、結構な客で埋まっている。ライバルが減った分、制約のある営業時間の中でも多くの客を集め、シェアを高めているようだ。

 舌を喜ばせる酒やさかなは、人を引きつけてやまない。それと同じくらいに魅了するウールのジャケットを作れば、人は手に取り、その良さが分かるはず。



この記事に関連する記事