かつてのにぎわいがウソのように静かな東京・銀座の街。インバウンド(訪日外国人)需要に支えられ、勢いのあった商業施設のほとんどが見るも無残な状況になっている。厳しい環境はまだまだ続きそう。銀座という表舞台から撤退するファッションブランドも後を絶たない。
平時であれば好立地の物件を体力が持たず、手放す企業も増えている。そうした空き物件を海外の投資会社などが狙っているとの話もよく聞く。撤退する企業がある一方で進出する企業もある。これまで銀座に直営店を出したくても出せなかった新興企業にとっては今がチャンスかもしれない。
記者が以前から取材してきた革小物の新興ブランドは昨年末に銀座に初の直営店を出した。「コロナ禍がなければ格安物件が空くことはなかっただろう」と即決したという。オーダースーツ専門店も同業他社が撤退した居抜き物件に出店。オーダーメイドの聖地、銀座に店を構えることができた。
地方の中小企業のブランドによる都内の有力百貨店内への期間限定ショップの開設も急増している。現状では以前のような集客は見込めないが、〝腐っても鯛(たい)〟である銀座からの発信力は今後のブランディングに効果を発揮するはず。アフターコロナの未来を切り開く一歩を踏み出した勇気を称えたい。