世界で活躍する日本の老舗企業がファッションビジネス業界にもまだまだあったと取材で初めて知り、うれしく思った。そこは服作りには欠かせない小さな部品、ミシン針を生産するオルガン針という会社だ。華やかなファッションの世界を支え、ミシン針の業界ではドイツ企業と並び、世界2強のポジションだという。
オルガン針は1920年に蓄音機針メーカーとして東京で創業。次に手掛けたミシン針が世界的なブランドに成長。用途は服以外にもインテリア、カーシート、畳、かばん、靴、紅茶パック、本など幅広い。ミシン針のほか、メリヤス針、フェルト針、電子プローブもグローバルに製造・販売している。現在、本社を長野県上田市に構える。今年からスタートするミシン針の新製品によって新たな世界標準の確立に挑んでいる。
コロナ禍で地方の縫製工場ではファクトリーブランドの開発が目立つようになった。こうした工場の動きに、自分たちの強みを生かし、この難局を乗り越えたいという強い思いを感じる。ただし、自社ブランドを成功させる道のりは険しい。
今は誰でも安易にブランドを立ち上げ、ECで販売できる時代。だが、単発で終わることも多い。だからこそ、プロの作り手には継続する力が問われる。地道に長く続けた先に世界も見えてくるのかもしれない。