香港経済が少し復調してきた。観光客が戻っていないため以前の水準にはほど遠いが、2月の小売り売上高は25カ月ぶりに前年実績を上回り、3月も20%増と2カ月連続で伸びた。コロナ禍が響いた宝飾品などの高額品や衣料、靴が特に伸びた。
香港の苦戦はコロナ禍前の19年半ばから。反体制デモが本格化し観光客が激減した。同年8月香港に出張し、数十万人のデモに遭遇した。民主主義や自由を守ろうとする香港市民、特に若い人たちのパワーはすさまじかった。しかし、香港国家安全維持法(国安法)により逮捕者が続出、市民運動は抑え込まれてしまった。ただ、国安法の事業への影響を香港日系企業に聞くと、特には感じないという。
香港の21年第1四半期(1~3月)の実質域内総生産成長率は7.9%で、7四半期ぶりにプラスに転じた。通年では3.5~5.5%の見通し。新規感染者を低く抑えて個人消費が復調、中国や米国向けの貿易が回復してきた。
「状況が落ち着いてきた」。三共生興は店数を減らしていた香港で、新店の検討を始めた。中国からの観光客の戻りを先読みした判断だ。もちろん今後伸ばすのは中国本土。新中期経営計画では、現在の24店を3年で倍増する。マカオや台湾も伸びており、拡大を狙う。少しずつアフターコロナに向けた動きが出てきた。