高額品が売れているらしい。コロナ禍で男性の働き方が変わったことでユニフォームとしてのスーツスタイルが減った。ネクタイ市場も前年比では縮小しているのだが、より希少価値のある高額のネクタイを求める層がいるという。
取材を進める中で、他産業でも高級自動車や高級腕時計が売れていると聞いた。輸入車の新車販売台数を調べると面白い傾向が浮かぶ。トップ3は変わらず、1位メルセデス・ベンツ、2位フォルクスワーゲン、3位BMW。20年の販売台数はそれぞれ14.3%減、21.8%減、23.7%減だ。その一方で、フェラーリは24.7%増、ポルシェが1.2%増だそうだ。販売台数もフェラーリ1085台、ポルシェが1万752台と成長を見せた。
「モノ消費からコト消費へ」。数年前に盛んに言われたことだ。モノを買い揃える消費ではなく、体験型の消費が広がりを見せたためだ。しかし、コロナ禍で自由に行動できないことが、コト消費への支出を鈍らせた。海外旅行はもちろん、国内の遠出も躊躇(ちゅうちょ)される。それならばと富裕層は、希少価値のある高額品を消費するようになった。
ただ、これをモノ消費への回帰と見るのは一面的なのかもしれない。キャンプ需要など、コロナ禍でもコト消費が伸びている分野もある。高額品市場を含め、今後の消費の変化に注目したい。