《めてみみ》ワニの養殖を夢見て

2021/06/21 06:24 更新


 ワニの養殖を夢見る日本人がいる。古くはベルトの丸正の創業者、小薬正男氏(故人)。ワニの革を買い付けるよりも、捕まえるところから始めようと、70年の冬にアマゾンへ単身で乗り込み、爬虫(はちゅう)類の革の製造・販売する事業を始めた。日本でのエキゾチックレザーブームも追い風となった。

 その後、ワシントン条約の荒波に見舞われ、新天地を求めて東南アジアの奥地まで足を踏み入れた。インドネシアではワニの養殖事業に着手したものの、台風の影響や信頼できるビジネスパートナーを見つけられず挫折した。

 「将来、日本にワニの養殖場を作るのが夢」と話すのは爬虫類革専門で、なめしから縫製まで自社で一貫生産する藤豊工業所の藤城耕一専務。ワニは捨てるところがなく有効活用できる動物で、高級な革製品として人気の皮はもちろん、血液はサプリ、肉は高たんぱく低カロリーなのでアスリート食に最適だと言われる。ほかにも医療用途での研究など注目されている

 ワニは寒さに弱いので日本での養殖を考えると、温泉地なら可能性はある。こうした構想は観光業にも相乗効果があり、新たな産業の創出で地方創生にもなりうる。だが、法改正の必要など実現へのハードルはまだまだ高いらしい。原皮から全て日本製のクロコダイル革製品で世界と勝負できる日が待ち遠しい。



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