美しい石垣が残る盛岡城跡公園、国の天然記念物に指定された石割桜、サケが遡上(そじょう)する清流の中津川、点在する宮沢賢治や石川啄木にゆかりの地…。歴史と文化を感じる街、岩手県・盛岡市のビルの4階に4月、小さなギャラリーがオープンした。
運営するのは、知的障害のある作家とライセンス契約を結んでアートデータの商品化などを行うヘラルボニー。商業施設やファッション企業との協業も多く、業界でも近年、知られるようになったスタートアップ企業だ。
自閉症の兄を持つ松田崇弥・文登さんの双子の兄弟が社長・副社長を務める同社。昨年12月に盛岡市に本社を移し、今春に併設するギャラリーも完成した。
ギャラリーから徒歩数分の距離にあり、ヘラルボニーの常設店もある地元百貨店の川徳では、懸垂幕や社員の胸元のバッジなど様々な場所でヘラルボニーのアート作品が使われている。地元の鉄道や、飲料・食品メーカー、行政やイベントとの協業も多様に広がる。
福祉やボランティアの視点ではなく、純粋に「障害者の描く個性あふれるアートに対するわくわく感から始まった」と文登副社長。「岩手といえば、冷麺、宮沢賢治、ヘラルボニーと言われるような、観光資源の一つにしたい」という意気込みも、地元の熱い応援を見ると、そう遠くない未来に実現しそうに思う。