《めてみみ》顧客起点の運営

2021/10/22 06:24 更新


 阪神梅田本店が10月初旬に先行開業した。建て替えとはいえ、百貨店としては久しぶりの大型の新店だ。同質化が課題とされ、低迷が続く百貨店業界にあって、同店が掲げたのは「毎日が幸せになる百貨店」。大都市部では珍しい「ラグジュアリーブランドのない」百貨店となった。

 1階を食物販にするなど“日常消費”の主役「食」の面積が全体の3割以上を占め、各売り場を「スモールマスマーケットを捉えた共感型コンテンツ」で組み立てたのが特徴だ。基礎のフロア構成は服飾雑貨、婦人服などカテゴリー別だが、各売り場には食品や雑貨などカテゴリーの枠を超えて商品が配された。

 「一人十色」と言われるほど嗜好の多様化が進む。「スモールマス」は、関心・嗜好(しこう)をベースに区分した一定規模のボリュームを持つ消費者層のこと。次世代キャリア、アクティブシニアなどの世代分類によるファッション提案が、成果を上げたと言い難いのは多様化の一例だろう。

 年齢や世代などマスマーケティングでは捉え切れなくなった消費者を再分類したスモールマスだが、当初想定した消費者像から変容する可能性もある。日々対話を欠かさずスモールマスのニーズを深掘りすることが重要だ。そのために、同店がナビゲーターと呼ぶ「旗振り役」を配したのも顧客起点の新たな運営手法に見える。



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