紳士服業界ではコロナ下の〝ニューノーマル〟に対応したビジネススタイルが注目されている。市場には高機能なセットアップがあふれている。先日も紳士服専門店のAOKIが記者会見で「パジャマスーツ」を軸にしたカジュアル領域の年間売上高を今後3年で100億円以上に引き上げる方針を発表したばかり。
パジャマスーツとは、ネーミングの通り、パジャマのリラックス感とスーツのきちんと感を併せ持つ商品。リモートワークやおうち時間、軽い運動、仮眠などビジネスからカジュアルまで1着で着回せる。昨年11月に販売を開始し、累計販売数は3万着を突破した。今秋冬もラインナップを前年比約10倍に拡充するという。
一方、従来型のウール生地のかっちりしたテーラードスーツはコロナ下で大打撃を受けた象徴のように思われている。ただ、今秋の立ち上がりの商況を見ると、百貨店販路のトラディショナルなブランドではパターンオーダースーツの売り上げは前年を上回るなど健闘している。
スーツの総販売着数が減少するのは仕方ないかもしれないが、ビジネスシーンで必要とする層は必ずいる。これからのテーラードスーツにはファッション性はもちろん、ステータスや嗜好(しこう)性が求められるだろう。ニューノーマルのビジネススタイルと共存していけると信じたい。