大手百貨店で実店舗とコンテンツの魅力化に向けた新たな試みが始まった。販売員がいない、店で売らないDtoC(メーカー直販)モールで、デジタルを活用したマーケティング、販売に着手した。先行例が、そごう・西武は9月に開設した西武渋谷店の「チューズベース・シブヤ」だ。
値札やPOP(店頭広告)がなく、商品サンプルとQRコードがあるだけだ。興味を持った商品はスマートフォンでQRコードを読み込んでウェブカタログを閲覧する。販売員が常駐せず、顧客が自由に商品を試し、スマホで注文できるため無人販売も可能。
大丸松坂屋百貨店は大丸東京店にDtoCモール「明日見世」(あすみせ)を10月、オープンした。商品はQRコードを読み込んで、出品ブランドのECサイトで購入してもらう。チューズベースと異なるのは、百貨店の社員が常駐し、人を介して作り手の思いや商品背景を伝える点。販売ノルマがないため、来場者とのコミュニケーションに集中できる。
これまでのMDでカバーできていなかったエシカル(倫理的な)視点の品揃えなど、百貨店離れしている若年層への新たな体験価値を提供する。一方で売り場の評価の仕方が必要になる。従来の消化仕入れ、定期借家契約にないヒトとモノのコストを低減した新しい取引形態の確立に向けた実証実験となる。