最近あまり聞かなくなった「ショールーミング」。実店舗で着用感や生地の質感などを確かめ、購入はECで行う消費行動だ。店側からすれば「運営コストがかかっているのに」と苦々しい面があったが、オムニチャネル政策が進んだからだろうか、さほど問題視されなくなった。
ある店で話を聞いていた際、久しぶりにその言葉を思い出した。店の天井にセンサーを張り巡らし、来店客の動向をデータとして残し、店舗運営を改善しようという狙いだが、それだけではない。店の結構な面積を海外の新興ブランドなどに貸し、そのデータを提供してマーケティング費用をもらっている。ブランドによって契約はまちまちで、実際に売れた場合の手数料を取ることもある。有期の契約だから、常にフレッシュな商材が集まる。
取り組みを始めたのは、コロナ禍で店舗運営がままならなくなったこともあるが、もう一つある。「客は欲しい商品を見つけたら、結局、スマートフォンで一番安く買えるところを探す」。となると、自分たちが仕入れても在庫が現金化できず、新しい商品も見せられない。だったら割り切って紹介だけして、ブランドの公式サイトへ誘う。そして、マーケティング費用をもらう。
小売りはどんどん変化する。売らない小売りがごく自然に受け入れられる未来は、すぐそこにある。