今や本紙でも見ない日はないアパレルのDtoC(メーカー直販)。データドリブンだ、コミュニティー形成だ…とアメリカでの成功事例を紹介され、それにならった新興企業がどんどん登場している。新しいビジネスモデルだと持ち上げられ、糸偏業界の大手や中小も参入し始めた。
あたり前過ぎるためか、さほど指摘されないが、新興のDtoCブランドは、伝統的なアパレル企業のモデルを踏襲しない。逆にそんな失敗の地雷を踏まないように、業界の〝常識の非常識〟をそぎ落としているかのようだ。色や柄のバリエーションやシーズンも細かくないからSKU(在庫最小管理単位)は少ないし、はなから全て予約受注方式のところもある。
なぜ、そんなことで成り立つのか。彼らが相手にするユーザー(顧客)は、極端に言えば、商品そのものにこだわっていない層だからだ。クラウドファンディングの支援者も同じで、従来のアパレルが普段から接してこなかった市場へのアプローチだ。意外にここは見落としている。
DtoCブランドは、商品と同じか、それ以上に体験価値や感情価値、信頼醸成などに重きを置く。あるDtoC支援会社の代表も、商品にこだわり過ぎると「コストプッシュ要因になり危険」と警鐘を鳴らす。これまでのアパレルの常識で事業を進めると危険なのである。