売り場の定点観測で渋谷と原宿のメンズセレクトショップを取材した。11月は中旬以降、気温が下がり、どの店もある程度客足が戻ったが、店によって売れたものが違った。
ある店では月末の急な冷え込みでアウターが売れたが、動くのはショート丈のウールコートばかり。売れそうと予測して仕込んだダッフルコートはほぼ動かなかった。その店に近い別の店ではダウンジャケットが売れた。毎シーズン人気の仕入れブランドではなく、生地メーカーと協業したオリジナルが「去年以上に動いた」。
原宿の路面店では70年代調の古着っぽいスタイルが人気の仕入れブランドの別注のシャツやカーディガン目当てに、入荷日には朝から並びができ、平日だったが、夕方まで店はにぎわった。
売れたアイテムは異なるが、どの店もその商品についてSNSや自社ECで告知し、久々に都心に出向いて買物しようと考えていた20~40代が、その情報に食いついたという構図は共通している。
一致点はまだある。売れたアイテムの価格がどれも税込みで3万~4万円程度という点。この価格帯を超えると売れ行きが鈍るようだ。どの店も服好きに向けた品揃えで勝負していて、ようやく店に活気が戻りつつあるけれど、ここにきて、この国の平均給与が一向に上がらないという事実が重くのしかかっている。