ユナイテッドアローズ丸の内店勤務の明石達司さんは、キャリア30年を超える接客販売のスペシャリストだ。パフォーマンスの高い販売員の一部だけが選ばれる「セールスマスター」の称号も持っている。
約7年前に店頭での接客の様子を取材したのが最初で、その後、社内ロープレ大会で優勝した時に話を伺い、最近では2月に新人向けの接客の実地研修を取材した際にお会いした。
その接客は、当然だけれど、大げさな褒め方や押しつけがましい態度、ひけらかすような物言いなど全くない。あくまで柔らかい物腰でゆったりと丁寧に、親切に笑顔で話す。すると会話に引き込まれて客側も笑顔になり、いつの間にかリラックスして買い物を楽しんでいる。それが自分のような素人にもわかる。
見ていると、優れたアスリートのようにわずかなリアクションから客がどんなタイプか見極め、相手との間の取り方や呼吸の合わせ方を変えているようですらある。最後にお会いした研修では、若い販売員に自身の接客を見せることで、言外にその技術を伝えようとしておられたように思う。
明石さんは今年で定年を迎えるが、定年後も店頭に残り、働くそうだ。ネットで買うことが当たり前になって、リアルの店が減っても、服を買うときに客を喜ばせる接遇の技術は継承した方が良いと思う。