楽天ファッション・ウィーク22年秋冬が全日程を終えた。デザイナーたちはそれぞれの物作りの背景を生かし、オリジナルの世界を発信した。クリエイションの完成度は様々だが、若手デザイナーではアメカジやパンクなど、過去に流行したスタイルをもとにしたデザインが見られた。
初期衝動として、自分の好きなスタイルやカルチャーをもとにデザインしたい気持ちは理解できる。過去の様々な経験や蓄積がその人のデザイン哲学を形成しているからだ。過去のデザインを踏まえて発展させるというサンプリングのようなデザイン手法は90年代以降、特に強まった。
例えば、90年代に「グッチ」を鮮やかによみがえらせたトム・フォードの最初のコレクションはモッズが切り口だった。60年代のモッズスタイルを後景にしたデザインで人気を集めて以降、トム・フォードには過去のスタイルからの引用が見られた。他にも「ヘルムート・ラング」のミリタリースタイルや「マルタン・マルジェラ」のビンテージを背景にした物作りなど、90年代は過去からの引用をもとにしたデザインが広がった。
今では全くのゼロから新しいものを作るのではなく、サンプリングがデザインの主流となった。問題はかつての様式としてのファッションにとどまるか、それをモダンに解釈できているかにある。