《めてみみ》オープンダイアローグ

2022/04/05 06:24 更新


 対話を通じた精神医療のアプローチにオープンダイアローグというのがある。医者のほか看護師や家族、友人も参加し、ケアを必要とする人が何に困っているか、可能なら毎日でも時間を設けて聞く。

 参加者は反論も助言もせず、とにかく患者の話を聞く。そして患者の話に対する感想や共感を本人の目の前で話し合う。医者など専門家たちは、しんどい気持ちへの対処をどうすれば良いか、患者のいない場所で決めず、その場で知恵やアイデアを出し合う。

 患者は、回数を重ねるうちに、自分の話をちゃんと受け止めてもらえたと体感できる。どういう風に症状に向き合うべきか、一方的に押し付けられていると感じることもなく、ただ、目前の会話を聞く中で、様々な向き合い方を俯瞰(ふかん)する。

 大事なのは、参加者の発言がモノローグ「独り言」になっては駄目で、他者を説得しようとか論破しようとかしないこと。あくまで「開かれた対話」に徹することで、患者のもつれた心の綾(あや)を解きほぐしていく。

 この手法は80年代にフィンランドで始まった。薬をほとんど使わずに統合失調症などの回復が見込めるため、日本などにも広がりつつある。メンタルケア以外に人間関係の改善にも効果が期待できるらしい。ひょっとしたら、ビジネスの場面や職場での信頼関係醸成にも使えるかもしれない。



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