最近、よく耳にするのが「クライアンテリング」。狭義の意味は、店頭販売時にマニュアル的な対応ではなく、コミュニケーションを重ねながら信頼関係を構築し、永続的な顧客作りを目指すものだ。ラグジュアリーブランドなど、上顧客を作る上での重要なキーワードだ。
販売スタッフは、商品知識はもちろん、顧客に合わせて多彩な話題に通じていなければならない。個人的な情報を頭に入れながら、適度な距離感も必要だ。OMO(オンラインとオフラインの融合)時代を背景に、ECでの購買履歴の把握も前提になる。
ビジネスが高度化・複雑化するにつれ、新しい言葉が浮かんでは消えていく。同僚記者と雑談していた時のこと。「用語そのものを覚えるよりも、その用語が持つ意味を覚えていこう」という結論になった。クライアンテリングなら、昔の近江商人の仕事の仕方だろうか。
日本各地を営業に回った彼らが大事にしたのが大福帳。過去の商売の記録が全て載っている。書かれた記録だけでなく、その家の経済状態、主人の趣味、家族構成など多種多様な情報も頭に入れておく。時には強気で商売を進めただろうし、場合によっては目先の利益より、将来を見込んだ商売を優先しただろう。人と人との信頼関係作り。時代が移ろうと情報化が進もうと、その本質は変わらない。