香港が英国の植民地となったのはアヘン戦争後。その100年後の1942年から太平洋戦争が終結する45年までは日本が占領していた。その後再び英国支配に戻り、長年の交渉の末に97年7月1日、中国に返還された。
その時に約束されたのが、返還後50年間は資本主義体制と高度な自治、言論や集会の自由などを認める「一国二制度」。今年は返還25年。この折り返し地点間際で香港は大きく変わってしまった。
19、20年の大規模な民主化デモを機に、中国政府は反体制的な動きを封じる「香港国家安全維持法」(国安法)を20年6月末に公布。香港の民主派リーダーたちが相次いで逮捕され、民主派新聞などが廃刊に追い込まれた。保証されているはずの言論や集会の自由は消え失せ、沈黙せざるを得ない状態だ。
返還25年を祝う式典で、中国の習近平国家主席は、香港の一国二制度は長期的に順守されなければならない、と発言した。同じ一国二制度でも実質的な為政者と市民とで解釈がこれほど異なるのには驚く。
国安法などの事業への影響は、「ほとんど感じない」と在香港の日系商社。米国は「ビジネス注意情報」を出し、香港事業におけるリスクへの警戒を呼びかけている。リスクの高まりに注意しながら、香港の優位性をどう生かすのか。企業としての姿勢や力量が問われる。