「HUIS」（ハウス）は静岡県西部・遠州地域で生産されている「遠州織物」を使ったアパレルブランドです。旧式の織機を使った細番手高密度の生地を主に使い、産地の魅力を発信してきました。ですが同時に、アパレルにおける中間材たる遠州織物は、消費者に知られることがないという実情を痛感してきました。自分自身も遠州出身で、ブランド立ち上げ以前は地元の行政職員として10年以上勤務していましたが、恥ずかしながら遠州織物を知ることはありませんでした。
前職で長く農林水産業の振興に携わってきた立場として、こうした現状は驚きでした。一次産業の場合、多くは○○産という情報を信頼性の根拠として素材を流通させていきます。また多くの場合、その地域に住む人たちにとって〝我が町の特産品〟として誇りに思われています。ただ、遠州織物にはそれがない。
原料から最終製品に至るまで、多くの作業と人を介するアパレル業界の特殊性。それが要因にあることを次第に理解するようになりますが、一方で農林水産物における産地のような視点でアパレルを捉えることが、作り手にとっても消費者にとっても、いかに楽しみのあることかを感じています。そういう意味で今、新たな扉が開き始めている時代だと思っています。
（HUIS代表 松下昌樹）
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。
