JR東日本と東急不動産ホールディングス(HD)が2月14日、10年間の包括的業務提携契約を結んだ。国内外での「多機能・複合型街作り」、再生可能エネルギー施設の開発などを連携して進め、5年後をめどに約1000億円の事業収益を目指す。
個別の大型プロジェクトで競合する企業同士の協業は不動産業界では珍しくない。JR東日本と東急不動産HDも渋谷駅前の再開発などに共同で取り組んできた。東急不動産は小田急電鉄などによる小田急百貨店新宿店本館跡地を中心とした新宿駅西口の再開発に事業主体として参画している。
今回の両社提携は範囲が幅広く、これまでの取り組みからかなり踏み込む。ともに、中期経営計画で進める事業領域拡大による新たな成長戦略を加速させる。
交渉が始まったのは昨年秋。コロナ禍による事業環境変化に対する危機感があった。テレワークの浸透で、鉄道利用客が減少しているJR東日本にとっては鉄道以外の事業拡大が必須だ。
深澤祐二JR東日本社長は東急不動産HDがノウハウを持つ再エネ施設も取り込んだ「持続可能な街作りによる社会課題の解決が提携の最大の目的」と強調した。事業拡大の先にある社会への貢献を見据え、実行こそが企業の価値を高める。その意味で、両社の提携による今後の取り組みが注目される。