《めてみみ》泥をかぶっても

2023/03/09 06:24 更新


 英「ダックス」や仏「レオナール」を保有する三共生興が好調だ。円安効果もあり海外事業が伸長。国内では品番や在庫を絞り、正価販売が7割超と収益率を高めている。23年3月期の業績予想は売上高195億円、経常利益28億円に上方修正した。

 来期が最終年度の中期経営計画の経常利益目標は25億円。1年前倒しで達成する見通しだ。売上高も200億円規模に戻し、「次は250億円とV字で再成長を目指す」と井ノ上明社長。

 この10年ほど、不採算事業の売却や赤字店の閉鎖などを断行し売り上げは半分に減った。前社長の川﨑賢祥名誉会長は当時、「利益が伴わない売り上げは1円もいらない」と利益重視を徹底した。記者は「事業規模が縮小し続けている。どう反転し、再成長を目指すのか」と何度も聞いた。

 その川﨑名誉会長が選んだのが、海外事業で実績を積んだ井ノ上氏だ。「私は管理畑出身なので次の社長は営業出身と決めていた」という。

 この間、中国での出店やレオナールの買収など攻めの経営が目立つ。井ノ上社長は「今、攻めの経営ができるのは、川﨑会長が強固な財務基盤を築いて下さったから」。企業の姿を変えるには時間も手間も掛かる。自分は泥をかぶってでも守りを徹底し、本格的な攻め手はそれを得意とする次の世代に託す。川﨑名誉会長の慧眼(けいがん)を感じる。



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