都内では楽天ファッションウィーク東京23年秋冬が真っ盛りだ。欧州のデザイナーコレクションに続いて、新しい美を巡るデザイナーたちの提案が続いている。
今までのところで気になったのは「まとふ」(堀畑裕之、関口真希子)が地方の伝統的な職人技術に焦点を当てて見せたこと。これまでも、様々な地方の職人と取り組んできたが、実際の服と映像を組み合わせて3年半ぶりのファッションウィーク参加となった。秋冬は出雲への旅を通じて、松江の伝統的な職人たちの技術を取り入れた。手作業で職人に作ってもらった陶器のボタンや、陶器作りの技法「スリップウェア」からイメージしたジャカード柄のコートなどを出した。
昨年来、日本の伝統的な職人技術をどう守るのかが気になっていた。クラフトマンシップを守るために努力するエルメスの営みを知ったからだ。職人の伝統的な技術を守る事業に取り組むフランスの産業界に対して、日本では何が有効だろうか。そう考えていただけに、まとふの活動に頼もしさも感じている。
エルメスとは規模は異なるが、それでも職人たちと交流を通じて物作りを持続していく志は同じ。そんなデザイナーブランドがいくつもあれば、それだけ可能性も広がる。日本には日本にふさわしいやり方がある。それを探さなければならない。