デザイナーとして60年近く、日本のブライダルファッションをリードしてきた桂由美さん。美しいドレスを作るだけでなく、著名人のモデル起用や、企業や自治体との協業を通じ、結婚への憧れを喚起する多様な策を打ってきた。
桂さんは日本人の非婚・晩婚化、少子化への憂慮を、ことあるごとに口にしてきた。2月のショーの際も「少子化に危機感を持っている」と、国の将来を憂いた。
政府は「異次元の少子化対策」で子育て支援を強化するという。子育て世帯の負担軽減や、男女ともに子育てしやすい職場や社会環境の整備は、大いに歓迎したい。ただ、既婚女性の出生率は、95年よりも、05年や15年の方が高い。となると少子化は、婚姻組数の減少の影響も大きい。婚姻数は70年代前半は年間100万組を超えていたが、21年には50万組まで低下した。
桂さんが事業を始めたのは、ウェディングドレス着用率がわずか3%だった時代。「日本を最もウェディングの美しい国にしたい一心で仕事を始め、今もその気持ちは変わっていない。この仕事にかけている」と強い信念で新しい市場を作ってきた。今や、ドレス着用率は9割を超える。
少子化対策は、婚姻組数の増加も含めて多面的に、長い目で取り組む課題。ほぼゼロから市場創造を実現した開拓者のような、ゆるがぬ信念が必要だ。